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漢方薬「四逆散」が、オートファジー関連病の治療に有効である可能性-阪大

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2020年03月10日 AM10:30

さまざまな病気の発症や進行に影響するとされる「

大阪大学は3月6日、日本薬局方に収載されている漢方薬のひとつ、四逆散が、オートファジーの活性を抑えることを見出し、その機構を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科・生命機能研究科(兼任)の野田健司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「PLOS One」に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトの細胞は、栄養源の供給が途絶えた場合、自らを作っているタンパク質などの構成成分をリソソームで分解し、栄養として利用する。この現象はオートファジーと呼ばれ、これが正常に起こることでヒトの体は健康を維持している。しかし、何らかの原因でオートファジーの活動が落ちたり、または過剰になったりすると、さまざまな病気(がん、アルツハイマー病など)の発症や進行に影響することが明らかになりつつある。そのため、オートファジーの活性を人為的に調節する薬剤の開発が盛んに行われているが、安全でかつ有効な薬剤の確立には至っていない。

漢方薬は、近年、その効果が再認識され、処方薬および市販薬として、さまざまな病気の治療や健康管理に利用されてきている。中国や日本では過去より健康に効果がある生薬の組み合わせとして選ばれ、体系化されてきた。しかし、漢方薬がどのようにしてヒトの体に効果を及ぼすのかは、ほとんど明らかにされていなかった。

四逆散が、飢餓誘導性のオートファジーを阻害

今回の研究成果により、四逆散が、飢餓誘導性のオートファジーを阻害することが解明された。四逆散は、胃潰瘍、胆のう炎、胆石症、神経症などの疾病に効能があるとされており、特に、膵炎とオートファジーの関係などが報告されている。四逆散の効能が、オートファジーの抑制効果にある可能性が示唆され、今後、薬効成分等の分析が進むことにより、より良い治療法の確立が期待される。

また、既知の病気の薬効とは別の病気に対する薬効を見出し利用する、ドラッグ・リポジショニングという考え方が注目されている。四逆散をはじめとする漢方薬は処方薬として認可され、安全性が担保されているため、がんなどのオートファジー関連病の治療に、ドラッグ・リポジショニングとして漢方薬が活用されることが期待される。

研究グループは、「漢方薬は実際の薬効があることで伝承されてきたことが最大の特徴なので、オートファジーに効くことは、驚くに値しないのかもしれない。また今回、もう一つの漢方の特徴である生薬の組み合わせが重要であることもわかった。今後、その効能とオートファジーのより詳細な関係を明らかにし、先人たちが残した大いなる遺産を、より一層、われわれの健康増進に活かしていく道を探っていきたいと考えている」と、述べている。

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