公正取引委員会は5日、降圧剤「カルバン錠」(一般名:ベバントロール塩酸塩)の販売に関してカルテルを結んだ疑いで、鳥居薬品に対し独占禁止法の規定に基づき、排除措置命令と287万円の課徴金納付命令を行った。日本ケミファと共同販売するカルバン錠について、医薬品卸へ納入する仕切価を両社で取り決めていたとして、不当な取引制限の禁止を規定した独禁法第3条に違反するとした。一方、日本ケミファに対しては、立ち入り検査前に違反行為の自主申告があったこと、再発防止策を既に構築していることを理由に、排除措置命令や課徴金納付命令が免除された。
公取委は昨年7月、日本ケミファによる違反行為の自主申告を受け、日本ケミファ本社と関係拠点、鳥居薬品の本社に立ち入り検査を行っていた。調査を行った結果、両社は薬価改定で見直されるカルバン錠の仕切価に関して情報交換を行っており、遅くても2014年3月からは仕切価の低下を防止し、自社の利益を確保することを目的に、2社の仕切価を合わせることに合意していた。
さらに、薬価改定が行われることになった場合は、2社の営業課長級の者が会合を開催するなどして、カルバン錠の仕切価を両社でほぼ同一の価格とする取り決めを行っていたことが明らかになった。
公取委は鳥居に対し、両社の合意が消滅していることを確認することや、他の事業者とカルバン錠の仕切価を決定してはならないことなどを取締役会で決議し、その内容を日本ケミファや取引先である医薬品卸に通知し、社員に周知徹底しなければならないとする排除措置命令を下した。また、課徴金として10月6日までに287万円を納付するよう命令した。
鳥居は、「株主、取引先など関係者に多大な心配、迷惑をかけたことを深くお詫びする」との声明を発表した。
一方、日本ケミファは、18年に高リン血症治療剤「炭酸ランタンOD錠」の販売に関する課徴金減免制度を申請した際に社内調査を実施し、カルバン錠の販売に関する違反行為が判明したため、公取委に自主申告を行った。炭酸ランタンOD錠に関する違反行為を受け、再発防止策を打ち出していることも踏まえ、今回も排除措置命令や課徴金納付命令を免れた。
カルバンは、日本ケミファが国内で開発・製造を行い、鳥居薬品と共同販売している長期収載品で、後発品は参入していない。