退院した75歳以上約3万人分のレセプト情報を分析
東京都健康長寿医療センターは3月5日、急性期病院でリハビリテーションを受けた後に自宅などへ退院した75歳以上約3万人分のレセプト(診療情報明細書)情報を分析し、医療保険制度で提供された退院支援サービスは、退院直後の再入院に対して抑制効果を認めないことを示したと発表した。この研究は、同研究所の石崎達郎研究部長、光武誠吾研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Archives of Physical Medicine and Rehabilitation」に掲載されている。
高齢患者にとって、入退院を繰り返すなどの療養環境の変化は心身機能への大きな負担となるため、退院直後(30日以内)の再入院は回避すべきと考えられている。そこで、医療保険制度でも、退院後の生活がスムーズに送れるように退院計画や、患者・家族へのセルフマネジメント指導などの退院支援サービスが提供されているが、このサービスが退院直後の再入院発生に及ぼす効果については明らかになっていない。
今回、研究グループは、退院直後の再入院予防策のあり方を検討するため、リハビリテーションを受けた退院患者を対象に、各退院支援サービス(退院計画、退院時リハビリテーション指導、地域ケアとの連携)の利用と退院直後の予防可能な再入院発生との関連を見ることを目的に研究を進めた。
入院前に在宅医療で治療を受けていた人などは、退院直後の再入院発生率が高い
研究グループは、急性期病院でリハビリテーションを受けた後に自宅などへ退院した75歳以上約3万人分のレセプト情報を分析。その結果、退院直後に再入院した退院患者は974人(2.8%)だった。その特徴として、入院前に在宅医療で治療を受けていた人、入院中に一日あたり多くのリハビリテーションを受けていた人、フレイルのリスクが高い人が退院直後の再入院発生率が高いことがわかったという。また、退院計画、退院時リハビリテーション指導、地域ケアとの連携など、すべての退院支援サービスは退院直後の再入院に対して抑制効果が認められなかった。
日本の医療保険制度における個々の退院支援サービスは、退院直後の再入院に対して抑制効果が認められなかったが、欧米では、退院計画・セルフマネジメント指導・地域ケアとの連携・退院後のフォローアップなどを組み合わせた「移行期ケアプログラム」の退院直後の再入院抑制効果が報告されている。今後、日本においても、個々の退院支援サービスをパッケージ化した移行期ケアプログラムの開発や、退院直後の再入院への抑制効果を検証していくことが必要だ。同研究はそのための基礎研究としての意義を持ち、今回の結果を前向きに捉えて、次につなげることが期待される、と研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター プレスリリース