睡眠「不足」は心疾患のリスク増加、「不規則」では?
米国立衛生研究所(NIH)は3月2日、睡眠パターンが不規則な45歳以上の人は、規則的な睡眠パターンの人と比較して、循環器疾患(cardiovascular disease、以下CVD)を発症するリスクが2倍高いことが判明したと発表した。これは、ハーバード大学ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のTianyi Huang氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American College of Cardiology」にオンライン掲載されている。
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睡眠不足が肥満や糖尿病、心疾患のリスク増加に関連するということはこれまでに報告されている。一方で、日々の睡眠時間や入眠時間の乱れが、心臓に負の影響を与えている可能性が疑われているが、その影響はまだ解明されていない。
今回の研究の対象者は、アテローム性動脈硬化症の多民族研究(MESA)の参加者のうち、米国在住で研究開始時にCVDではなかった45〜84歳の男女1,992人。そのうち、白人は38%、アフリカ系米国人8%、ヒスパニック22%、中国系米国人12%だった。研究参加者は、はじめに睡眠評価のために、7日間連続で手首にアクチグラフを装着し、入眠時間と睡眠時間を記録された。睡眠評価は2010年~2013年までに行われ、その後2016年まで追跡調査を受けた。
不規則な睡眠はCVD発症リスク増、人種間でリスクに差
調査の結果、追跡期間(中央値4.9年)中に、111人が心臓発作や脳卒中などのCVDを発症、または、CVD関連の原因で死亡。1週間の睡眠時間のばらつき(標準偏差:SD)が120分を超えていた人は、60分以下だった人と比較して、CVDの発症リスクが2倍以上高かった(多変数調整HR 2.14、95%信頼区間1.24~3.68)。同様に、入眠時間のSDが90分を超えていた人は、30分以下だった人と比較して、CVDの発症リスクが2倍以上高かった(多変数調整HR 2.11、95%信頼区間1.13~3.91)。シフト労働者を除外しても同様の結果だった。また、既知の心血管リスク因子や閉塞性睡眠時無呼吸、平均睡眠時間などで調整した後でも、関連性は強いままだった。
また、不規則な睡眠とCVDの関連は、白人よりも、特にアフリカ系米国人の間で強い傾向にあったことが確認された。これは、民族的・人種的マイノリティにおいて、睡眠障害のリスクが高い傾向にあることを示す最近の研究結果と一致しているという。一方、男性よりも女性のほうが不健康な睡眠の影響を受けると過去の研究では示唆されているが、この研究では有意な差は認められなかった。
今回の研究によって、不規則な睡眠が新たなCVD発症リスクとなること、また、規則的な睡眠を維持することは、健康的な運動や食事、その他の生活習慣における対策と同様に、心疾患発症を防ぐことにつながる可能性があることが示された。「将来的には、睡眠障害を引き起こす血中バイオマーカーを探索し、より長期で大規模なフォローアップ研究を行うことが重要。不規則な睡眠を減らすように設計された専用アプリやウェアラブルデバイスなどを用いることで、根本的な問題解決が前進し、規則的な睡眠が得られるようになることが期待される」と、研究グループは述べている。