■長期品新ルールに86品目
厚生労働省は5日、全面改定した薬価基準を官報に告示した。4月1日から実施する。薬価ベースで平均4.38%(医療費ベースで0.99%)引き下げられ、そのうち、薬価制度改革分が薬価ベースで1.98%(医療費ベースで0.43%)となる。後発品の上市後10年を経過する前でも、置き換え率が80%以上となった長期収載品がその後の薬価改定時に引き下げ対象となる新ルールについて、置き換え率が80%以上となったのは協和キリンの「ネスプ注射液」など86品目に上った。また、今回改定で新設された特例効能変化再算定が適用されたノバルティスファーマのヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤「ゾレア」は約37%と大幅な引き下げを受けた。
薬価基準が改定されるのは、合計1万4041品目。そのうち、不採算品目を理由に219品目が現行薬価から引き上げられる。
今回の薬価改定では、後発品の上市後10年を経過する前でも、置き換え率が80%以上となった長期収載品はその後の薬価改定時に80%以上となっていることを再度確認した上で引き下げ対象となるルールが導入された。今回改定で置き換え率が80%以上となったのは、協和キリンの「ネスプ注射液」やサノフィの「アレグラ錠」など86品目となった。
初後発品の収載から5年経過後も後発品に置き換えられていない長期収載品の特例引き下げについては、置き換え率の下限を40%未満から50%未満に引き上げ、特例引き下げの対象品目数は計154品目。
新薬創出等加算の要件を満たしたのは計555品目で、前回改定から5品目減少した。品目要件を満たした品目数は、「希少疾病用医薬品」が246品目、画期性加算や有用性加算等の「加算適用品」が168品目などとなった。
品目要件を満たした加算対象555品目のうち、国内試験の実施数や過去5年間の新薬収載実績等をポイント化した企業要件を満たす上位25%(区分I)の企業数は21社だった。
新薬創出等加算の品目数が多かった製薬企業は、ノバルティスファーマが46品目で前回改定の2位からトップとなり、前回1位のファイザー35品目を上回った。次いで、ヤンセンファーマ29品目、サノフィ28品目の順となり、外資勢が上位を占める構図に変化はなかった。また、要件を満たさなくなった新薬で加算相当額を返還したのは120品目、返還額は750億円で前回改定から100億円増加した。
今回改定では、類似薬がなくても参照薬と比べて著しく1日薬価が高く、市場規模が拡大すると考えられる場合は現在の効能変化再算定と同様の再算定を行う特例効能変化再算定を導入。同算定は、ノバルティスファーマの「ゾレア皮下注用」4品目に適用され、全品目で引き下げ率は約37%に上った。
年間販売額が大きい品目の薬価を引き下げる特例拡大再算定は、MSDの「キイトルーダ点滴静注」、第一三共の「リクシアナ」の計7品目が対象となり、キイトルーダの引き下げ率は約21%となった。
通常の市場拡大再算定は、中外製薬の「アクテムラ」、ファイザーの「ビンダケルカプセル」など40品目に適用された。
一方、臨床現場で広く使用され、要件を満たした基礎的医薬品の薬価維持は計763品目が対象となり、前回改定から100品目以上増加した。
真の臨床的有用性の検証による加算対象には、田辺三菱製薬の「カナグル錠」など計5品目が適用されたが、アストラゼネカの「フォシーガ錠」については、改定前薬価から増減はなかった。
昨年9月の薬価調査結果も示され、後発品数量シェアは76.7%、後発品への置き換えによる医療費適正効果額は年間1兆6166億円、バイオ後発品への置き換えで226億円の削減効果があった。