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血管修復や再生に重要な「血管内⽪幹細胞」の高効率かつ簡便な分離法を確立-阪大微研

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2020年03月05日 AM11:30

⾎管内⽪幹細胞の分離は血管研究の発展に重要

大阪大学微生物病研究所は3月3日、血管内⽪幹細胞を⾼効率に分離できる⽅法を確⽴したと発表した。この研究は、同研究所の内藤尚道准教授と⾼倉伸幸教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Protocols」にオンラインで掲載されている。


画像はリリースより

血管の内腔は、⼀層の扁平な形をした⾎管内⽪細胞によって覆われている。臓器が傷害を受けて低酸素状態になると、⾎管内⽪細胞が増殖を開始し、新たな⾎管が作られる()。⾎管新⽣は傷害された組織が修復されるために必須だが、がん、炎症、線維化、動脈硬化巣の形成、さらには脂肪形成に⾄るまで、さまざまな病態にも深く関与している。そのため、⾎管新⽣を制御する分⼦メカニズムの解明は、病態を理解して治療法を開発する上で重要となる。⾎管新⽣の制御メカニズムは、近年⾮常によく研究され、その結果、⾎管新⽣を誘導する増殖因⼦(⾎管内⽪増殖因⼦)の作⽤を阻害する薬(⾎管新⽣阻害剤)が開発され、がんなどの治療薬として臨床治療に応⽤されている。

⾎管新⽣が⽣じるためには、⾎管内⽪細胞の増殖が必要だが、これまで、⽣体内の⾎管内⽪細胞は全て同じで、増殖する能⼒も全ての内⽪細胞で等しいと考えられていた。研究グループは2018年に⾎管内⽪幹細胞(⾎管を作る源となる⾎管の幹細胞)を発⾒し、その解析を継続してきた。これまでに、血管内皮細胞が全て同じという概念は正確ではなく、成体の⾎管内⽪細胞には増殖能⼒の「差」があることを明らかにしてきた。増殖能⼒の⾼い内⽪細胞は、たった1つの細胞から体の中で⼤きく太い⾎管を作る事ができることから、⾎管の幹細胞のような性質を持つ、特殊な細胞であることがわかっている。

簡単で単純な操作で効率よく分離

⾎管内⽪幹細胞を⾒つける事が困難だったのは、内⽪細胞を体から分離して、1つひとつの内⽪細胞の性質を解析する事が困難だった事が⼀因と考えられる。臓器から内⽪細胞を分離する⽅法はいくつか報告されているが、⾎管内⽪幹細胞の分離に適した⽅法は確⽴されていなかった。そこで今回、研究グループは、体の中のさまざまな臓器から内⽪細胞を分離して、検討を重ね、その中に含まれる⾎管内⽪幹細胞を効率よく分離できる⽅法を確⽴した。

今回確⽴したプロトコールの利点は、簡単で単純な操作により内⽪細胞と内⽪幹細胞を効率よく分離できるという点にある。まず、マウスの肝臓を解剖⽤のハサミを使って細かく刻む。その際、刻まれた組織⽚と次の工程で用いる酵素が効率よく反応するために、1mm以下の断⽚になるように、鋭利なハサミを⽤いて細かく刻んでおく事が⾮常に重要だ。次に、切った組織⽚をより細かく分解するために、細胞外マトリックスを分解する数種類の酵素を⽤いて、組織⽚を分散させていく。この酵素と反応させる際に、通常は酵素液の中に組織⽚をつけて温めるだけだが、本法では、組織⽚を浸した酵素液が⼊ったチューブを連続的に機械で振盪した。この⼯程を、酵素液を交換しながら数回繰り返すことにより、細胞外マトリックスが効率良く分解され、細胞同⼠が分離される事で最終的には単⼀の細胞に分散される。

今回確⽴した⼿法を⽤いることで、⾎管内⽪幹細胞を効率良く短時間で分離する事ができ、さらには内⽪細胞も⼤量に分離することが可能となった。この処理時間の短縮が、⽣細胞の割合の増加と細胞表⾯マーカーの保持につながり、フローサイトメーターによる細胞分離も可能になる。研究グループは、「本法は、酵素反応の時間を変更することで、肝臓のみならず、肺や⼼臓,⽪膚といった他の臓器からも同様に⾎管内⽪幹細胞を含む⾎管内⽪細胞を⼤量に分離することができるので、全⾝の⾎管研究の発展につながる事が期待される」と、述べている。

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