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タダラフィルの経母体的投与が胎児心不全治療法となる可能性-国循ほか

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2020年03月04日 AM11:30

これまでになかった胎児心不全モデルマウスを見出す

国立循環器病研究センターは3月2日、ホスホジエステラーゼ5阻害剤「」の経母体的投与が胎児心不全治療法になりうることを、胎児心不全モデルマウスを用いて世界で初めて示したと発表した。この研究は、同研究センターの細田洋司再生医療部室長、三好剛一再生医療部客員研究員(元国循周産期・婦人科医師/現国立成育医療研究センター臨床研究センター)、中川修分子生理部部長らの研究グループによるもの。研究成果は、欧州の科学誌「International Journal of Cardiology」に掲載されている。

胎児心不全は、胎児の先天性心疾患や不整脈などが原因となり、胎児循環が破綻した病態のこと。胎内で心不全が進行した場合は胎児を娩出して新生児治療に移行するしかないが、在胎週数が早ければ早いほど救命が難しくなるため、胎内で循環を維持する胎児治療法が望まれている。

しかし、これまでに胎児心不全のモデル動物はなく、また、胎仔心臓の構造や機能、循環動態をリアルタイムに評価する実験系も確立していないことから、胎児心不全治療法の開発は全く進んでいなかった。そこで、研究グループは小動物用超音波高解像度イメージングシステム(Visual Sonics Vevo2100(R))を用いて、胎仔期の心臓形態および循環動態を観察・評価することにより、胎児心不全モデルマウスの探索を行った。また、見出した胎児心不全モデルマウスを用いて、ホスホジエステラーゼ5阻害剤の1つであるタダラフィルの胎仔循環への効果を検討した。タダラフィルは、小児・成人領域では肺高血圧症の治療薬であり、心収縮能の改善効果もあることが知られている。


画像はリリースより

ダラフィル0.04mg/mLの投与で左室駆出率を改善、マウス胎仔で確認

Hey2遺伝子が胎生期より心臓に強く発現すること、Hey2遺伝子のホモ欠損マウスは心臓形態異常を呈し、出生後早期に心不全で死亡することが知られていた。まず、小動物用超音波高解像度イメージングシステムを用いて、Hey2ホモ欠損マウスの胎仔の心臓形態および循環機能の評価を行った結果、胎齢が進むにつれて左室の拡大および左心室駆出率の低下を認め、胎児心不全のモデルマウスとなりうることが判明した。

次に、同マウスを用いて、無治療群、タダラフィル低用量(0.04mg/mL)群、タダラフィル高用量(0.08mg/mL)群の3群に分けて、それぞれ母体に飲水投与を行い、胎仔循環への効果を検討。その結果、タダラフィル低用量群においてHey2ホモ欠損マウスの胎仔の左室駆出率の改善効果が確認された。この効果は、胎仔胎盤循環および胎仔の心臓形態や容量負荷の変化を介しておらず、胎仔心筋へのタダラフィルの直接作用が示唆されたという。また、タダラフィルには有効な治療域があることが推察された。

今回の研究によって確立された、小動物用超音波イメージングシステムを用いたリアルタイムに評価する実験系は、さまざまな遺伝子改変マウスの胎仔心機能や循環動態の観察、さらに治療開発薬の効果判定などに広く応用できると考えられる。また、胎仔心臓に対するタダラフィルの分子生物学的な作用機序については不明な点も多く、今後、さらなる解析が必要だ。研究グループは、将来的にタダラフィルを胎児心不全治療薬として臨床応用する場合には、胎児心不全の重症度も考慮しながら、人におけるタダラフィルの適切な投与量を探索する必要があると考えられる、と述べている。

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