児童虐待による死亡原因のトップは、赤ちゃんへの「揺さぶり」や「口塞ぎ」
東京医科歯科大学は3月2日、乳児虐待に多い揺さぶられ症候群および口塞ぎを予防するために厚生労働省と共同で作成した動画「赤ちゃんが泣き止まない」を母子保健行政に取り入れ、赤ちゃんへの揺さぶり、口塞ぎを52%まで激減させられることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男教授らと東京工業大学の宮崎祐介准教授の研究グループが、国立成育医療研究センターとの共同研究で行ったもの。研究成果は、「Child Abuse & Neglect」のオンライン版に公開されている。
児童虐待による死亡事例検証では、4分の1が虐待による頭部外傷であり、その多くが乳幼児揺さぶられ症候群と考えられている。しかし、赤ちゃんを揺さぶってもその外傷が目に見えないため、より視聴者にとってインパクトのある、乳児の頭が揺さぶられることによってどうなるかをコンピューターグラフックスによる解剖学的なメカニズムに基づいて示したビデオの効果検証を行う必要があった。また、泣きに対して口塞ぎを行なってはいけないことを明示したビデオの効果検証もこれまでになく、行う必要があった。
厚労省作成の動画「赤ちゃんが泣きやなまい」視聴で虐待が半減
今回、研究グループは、日本のA市における介入研究として、こんにちは赤ちゃん事業等において助産師、保健師、トレーニングされたボランティアが産後2か月時の家庭訪問で厚労省が作成した動画「赤ちゃんが泣き止まない」を視聴させるという介入を実施。4か月健診時において、対象となった産婦に動画の視聴状況、自己申告による揺さぶり・口塞ぎ行動状況、および他の状況(泣きの程度や産後うつ等)について質問紙で調査した。その後、動画視聴と自己申告の揺さぶり、口塞ぎとの関係について多変量ロジスティック解析を行い統計的に解析した。
合計5961名の産婦が質問紙に有効回答をした(有効回答率:73.8%)。解析の結果、動画を見た産婦は、乳児を揺さぶる割合が74%(オッズ比:0.36, 95%信頼区間:0.21-0.64)、口塞ぎの割合が 43%(オッズ比:0.57, 95%信頼区間:0.37-0.89)、どちらかの乳児虐待は 52%(オッズ比:0.48, 95%信頼区間:0.33-0.69)、低いことが判明した。これにより、乳児の泣きおよび解剖学的なメカニズムに基づく揺さぶりおよび口塞ぎの危険性に関する教育的動画は、産後4か月時における自己申告の揺さぶりおよび口塞ぎを半減させる可能性が示唆された。研究グループは、「今後もこんにちは赤ちゃん事業等で厚労省が作成した動画「赤ちゃんが泣き止まない」を全ての産婦に視聴させることで虐待による頭部外傷を半減できる可能性がある」と、述べている。
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・東京医科歯科大学 研究成果