全国民の約90%以上を占める都市部の住民を研究対象とした吹田研究のデータを活用
国立循環器病研究センターは2月28日、吹田研究のデータから都市部での地域住民を対象とした冠動脈疾患・脳卒中発症のリスクスコア(吹田心血管病スコア(吹田CVDスコア))を、日本で初めて開発したと発表した。これは、国循OIC循環器病統合情報センター・中井陸運室長らの研究グループによるもの。研究成果は、日本動脈硬化学会の専門誌「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」に掲載されている。
画像はリリースより
脳心血管病は、世界全体における最大の死亡原因であり、その対策が急務となっている。予防ツールとして、欧米では、冠動脈疾患の発症を予測するリスクスコアだけでなく、冠動脈疾患に脳卒中を加えた脳心血管病の発症を予測するものも開発され、すでに活用されている。しかし、日本では欧米と異なり、脳心血管病の発症全体に占める脳卒中の割合が冠動脈疾患より高く、欧米のリスクスコアをそのまま日本人に当てはめても、正確な予測はできない。また、日本においても脳心血管病のリスクスコアは開発されているが、総人口の90%以上を占める都市部の住民(平成27年国勢調査)を対象としたものは存在しなかった。
吹田研究は、国循が1989年より実施しているコホート研究で、大阪府吹田市の住民基本台帳からランダムに抽出した吹田市民を対象としている。全国民の約90%以上を占める都市部の住民を研究対象としている点が特徴であり、その研究結果は国民の現状に、より近い傾向があると考えられている。
研究グループは今回、国民の現状により近い吹田研究のデータを用いて、冠動脈疾患・脳卒中発症のリスクスコアの開発を行った。
尿タンパクや心房細動の有無、心電図所見などを含めた予測も可能、早期予防への貢献に期待
まず、吹田研究の対象者(30歳~79歳、男性:3,080人、女性:3,470人)において、冠動脈疾患・脳卒中の発症を2013年12月まで追跡したデータから、10年以内の冠動脈疾患・脳卒中発症確率を予測するスコアを開発。同スコアは古典的な循環器疾患の危険因子だけでなく、尿タンパクや心房細動の有無、心電図所見(左室肥大)などを含めた予測も可能だ。さらに、各予測因子のカテゴリーの点数を合計することにより、発症確率を予測することができる。
研究グループは、「本リスクスコアは、実際の健康診断や診療の場面で一般的に行われる項目を用いて、容易に計算可能であり、冠動脈疾患・脳卒中の早期予防に広く活用できるものと考える。また、脳心血管病に関係するガイドラインの策定などに貢献することも期待される」と、述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース