■在宅勤務や時差出勤増加
今回の調査では、製薬企業25社から回答が得られ、一部企業からは新型コロナウイルス感染症による影響があるとの声が相次いだ。
協和キリンでは2月10日から中国現地法人の活動を開始したものの、講演会の中止や営業担当者が病院を訪問できないなど事業活動に影響が出ているほか、韓国現地法人のMRについても病院への全面訪問禁止の措置を取った。日本新薬も北京事務所を一時閉鎖し、在籍者は原則的に在宅勤務が続いている。
エーザイは、2月10日から上海にある中国本社の事業や蘇州と本渓2工場の操業を再開した。数カ月分の在庫が確保されているため、「医薬品の安定供給に向けた問題はない」としている。ツムラも深セン、上海の拠点で稼働を開始し、影響は出ていない模様だ。
第一三共は、事業全体に占める中国事業売上は数%にとどまり、上海・北京工場で製造している医薬品のほとんどが中国市場のみに出荷している状況から、「事業全体への影響は限定的」としている。
ただ、「中国からの原料調達や中国での臨床試験で影響が出てくる可能性がある」とし、社内外の状況を注視して適宜判断していくとしている。
後発品メーカーの東和薬品も「中国からの原薬調達は現時点で影響はないが、今後の状況によっては影響を注視しなければならない」と回答した。
国内の事業活動でも、MR活動の自粛や自社主催の会合・講演会が中止に追い込まれている。多くの企業ではMRによる営業訪問を制限し、活動については副作用報告や市販直後調査など、安全性や法令に伴う対応を実施する場合に限られていた。
中でも、Meiji Seika ファルマやキョーリン製薬ホールディングス、あすか製薬、日本イーライリリーは「営業訪問の原則的自粛、積極的自粛」を行っている。ツムラも6日までは全社員の外勤業務を原則禁止している。
キョーリンは、コロナウイルス感染症が事業活動に与える影響として、「営業活動の制限による売上機会の損失」「罹患者発生時の生産体制維持や事業活動維持に関する懸念」を挙げている。
田辺三菱製薬も「全国的かつ急速な蔓延により、企業活動への重大な影響が生じることを懸念している」とコメント。旭化成は「事業への影響について精査中」、アッヴイやグラクソ・スミスクラインなどの外資系企業も「影響についてはまだ答えが出ていない」とし、今後の状況に応じて対応を検討していくと回答した。
新型コロナウイルス感染症の流行により、在宅勤務や時差出勤の対応も増えた。参天製薬では、オフィスワークを原則的にテレワークにした。
アステラス製薬や協和キリンの本社勤務でも在宅可能な従業員は原則として在宅勤務とし、在宅が難しい場合は通勤時間帯の人混みを避けて時差出勤とした。キッセイ薬品や第一三共も9日まで基本的に全社員に対して在宅勤務を要請している。
マスク着用や出社時での検温も実施している。エーザイでは自社オフィスの来訪者に対しても、検温を要請し、「37.5℃以上もしくはだるさや息苦しさがある場合は入館を断っている。入館者には手洗い、アルコール消毒、マスク着用をお願いしている」との措置を取っている。
その他、従業員に対して「混雑を避けるため、社内食堂の利用時間を拡大」「社内懇親会やレクレーションの原則自粛」「海外の私的旅行を禁止」「原則的に直行直帰」と指示する企業も見られた。