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先天性心疾患患者由来iPS心筋細胞で特異的な遺伝子発現パターンを発見-京都府医大ほか

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2020年03月02日 AM11:30

先天性心疾患研究へのiPS細胞の有用性は未確立だった

京都府立医科大学は2月26日、先天性心疾患患者より作出したヒト人工多能性幹細胞()を用いて、これらの iPS細胞由来の心筋細胞において遺伝子発現プロファイルに異常がみられることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科循環器内科学の木谷友哉病院助教らの日米国際共同研究グループによるもの。研究成果は、「サーキュレーションリサーチ」オンライン速報版に掲載されている。


画像はリリースより

先天性心疾患は、出生時において認められる最も多い形態異常であり、医学的な進歩にも関わらず、現在でも罹患者の長期の生存率や健康状態に大きな影響を及ぼしている。先天性心疾患では原因や病気の状態が個々人で大きく異なっており、また動物を用いた研究では人間での疾患の状態を正確に再現することが困難であることから、そのメカニズムには不明な点が多く残されている。これまでの同研究グループの成果を含め、ヒトiPS細胞を用いることで、人間の心臓疾患における状態をより正確に再現・反映することが可能であるとわかっている。iPS細胞を用いた先天性心疾患の研究はこれまでにも報告されているが、研究に使用された疾患・iPS細胞株が限定されていることもあり、iPS細胞を用いた先天性心疾患の研究の有用性は未だ確立されていない。

患者iPSに特異的な遺伝子発現プロファイルを発見、原因となる転写因子候補も判明

今回、研究グループは、先天性心疾患における心筋細胞の状態を明らかにするために、10 人の先天性心疾患患者(ファロー四徴症5人、単心室症5人)、および5人の健常者よりiPS細胞を樹立。各々のiPS細胞から心筋細胞を作製したところ、すべてのiPS細胞から効率的に心筋細胞を得ることに成功した。そこでこれらの心筋細胞を用いて全RNAシークエンス解析を行ったところ、患者由来の心筋細胞では発生・細胞分化にかかわる遺伝子発現パターンが健常者由来の心筋細胞と比べて異なっていることが明らかになった。また得られた遺伝子発現パターンを解析したところ、この異常発現の原因となっている可能性のある転写因子の候補が判明した。

治療法の進歩により先天性心疾患患者の多くは成人期を迎えることができるようになっているが、依然として心臓に問題を抱えている場合も少なくない。研究グループは、「今回の研究で示された、iPS細胞を用いた先天性心疾患の研究の有用性を踏まえ、新たな治療法開発へとつながる分子メカニズムの解明が期待される」と、述べている。(QLifePro編集部)

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