自治体の協力のもと積極的疫学調査を実施
国立感染症研究所は2月26日、発症前2週間に武漢渡航歴のない3人における新型コロナウイルス感染症の、国内初のヒト-ヒト感染事例について、自治体協力のもとに行った積極的疫学調査の結果を病原微生物検出情報(IASR)の速報として発表した。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、2019年12月以降中華人民共和国湖北省武漢市で発生した原因不明の肺炎患者から検出された新種のコロナウイルス。2月11日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症の正式名称を「COVID-19(coronavirus disease 2019)」と定めた(以下、COVID-19)。
画像はIASR速報より
患者2、患者3は患者1の接触者
日本国内の武漢渡航歴のない第1例目(患者1)は60代の男性で、1月X日(Day X)に悪寒、咳、関節痛が出現した。Day(X+3)に医療機関を受診し、各種検査異常なく経過観察していた。しかし、症状が増悪したためDay(X+11)に再度医療機関を受診したところ、胸部レントゲン検査で肺炎の所見を認め入院となった。この患者は業務上、武漢市からの旅行客とツアーにて接触があったため、COVID-19を疑い検査したところ、Day(X+14)にSARS-CoV-2陽性と判明した。
患者2は40代の女性で、Day(X-2)~(X+2)の期間、患者1や武漢市からの旅行客と接触があった。Day(X+6)に発熱、咳、痰などを発症し、同日、(X+7)、(X+8)、(X+9)にそれぞれ医療機関を受診した。Day(X+9)に胸部CT画像で両側性肺炎の所見を認め入院となった。保健所はDay(X+13)に疑似症サーベイランスの発生届を受理し、行政検査として提出。さらにDay(X+14)に患者1の接触者であることがわかり、Day(X+15)に検査をした結果、SARS-CoV-2陽性と判明した。
患者3は20代の女性で、Day(X+6)に咳、鼻汁が出現、Day(X+15)、(X+16)に医療機関を受診した。Day(X+16)に、患者1の接触者であることがわかった。検査をしたところDay(X+17)にSARS-CoV-2陽性と判明し、Day(X+18)に入院。胸部CT画像で肺炎の所見が認められた。
本事例における潜伏期間は3~8日の可能性、迅速な情報共有が重要
患者1と患者2はツアー[2]で、患者1と患者3はツアー[3]で一緒だったが、接触機会は事務連絡時の会話くらいだった。また、ツアー[1]、[2]の参加者は武漢市からの旅行客であり、車内では患者2、患者3は患者1の1列後方の座席に座っていた。患者1は、発症後、食事以外の業務中は基本的にマスクを着用していた。患者1~3とも、ツアー[1]~[4]の旅行客について、上気道炎症状を呈していた者がいたという記憶はないとのことだった。
これらの経過から、同研究所は次のように考察している。「感染源は同定できなかったものの、国内において同一空間を共有した者の間で発生したヒト-ヒト感染と推測された。その場合、本事例における潜伏期間は3~8日と考えられた。また、接触者の追跡にあたって複数の自治体が関係していたこと、患者1~3間の接触歴に関する情報がCOVID-19の診断につながったことから、関係機関、関係部署の迅速な情報共有の重要性が改めて認識された事例だった」。
同研究所は同速報の末尾で、協力医療機関、保健所、地方衛生研究所、自治体本庁に謝辞を述べている。
▼関連リンク
・国立感染症研究所 病原微生物検出情報(IASR)