第三者評価は、各大学の「薬学教育プログラム」に対する自己点検・評価に基づき第三者の視点で質を保証し、改善を促すもの。今年度を最終年度とする1期目では、7年間かけて74薬系大学の評価が一巡する。
2期目に向けて、昨年度の自己評価から適用された新たな評価基準には“三つの方針”のつながりを重視する考えが盛り込まれた。文部科学省の省令改正により、各大学は2017年4月以降、卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受け入れの方針を策定し、公表することが義務化された。
この流れを受けて新基準では、旧基準において別の中項目で行っていた各方針の評価を一つの項目にまとめた上で、1番目の項目として設定。三つの方針の一貫性や整合性をより重視して評価する姿勢を打ち出した。
各大学の自己点検や評価により、教育研究活動の問題点を改善する内部質保証のプロセスがしっかり行われていることも重視する。評価基準の書きぶりには大きな違いはないが、旧基準では最後の中項目に位置していた「自己点検・評価」が新基準の2番目の項目として上位に設定された。
新基準の項目や基準、観点の数は旧基準に比べて減少し、全体的にスリム化された。新基準の項目は、▽教育研究上の目的と三つの方針▽内部質保証▽薬学教育カリキュラム▽学生の受け入れ▽教員組織・職員組織▽学生の支援▽施設・設備▽社会連携・社会貢献――の八つにまとめられた。各項目のもとに計19の基準、各基準のもとに計53の観点が設けられている。
スリム化は図られたものの、引き続き評価が必要として「薬学教育カリキュラムが薬学共用試験や薬剤師国家試験の合格率の向上のみを目指した編成になっていないこと」という観点は新基準でも残った。
また、学生受け入れ時に「学力の3要素が多面的・総合的に評価されていること」という観点が新たに設けられた。文科省が進める改革の一環で、21年度以降の入学試験時に学力の3要素である▽知識・技能▽思考力・判断力・表現力等の能力▽主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度――を評価することが求められており、こうした動きを取り込んだものだ。
19年度に第三者評価を受けた13大学の結果公表をもって1期目の評価が出揃う見通しだ。18年度までに評価を終えた61大学の結果を振り返ると、同機構が定める評価基準に適合していると認定されたのは56大学。不適合はなかったものの、5大学は総合判定が保留され、評価継続となった。
同機構評価委員会の平田收正委員長(大阪大学大学院薬学研究科教授)は、「総じて各大学は真摯に取り組んでいることがうかがえるが、1期目で多かったのは、卒業認定・学位授与の方針に到達するだけの基礎的な学力や資質・能力が入学試験によって適切に評価されていないのではないかということ。結果的にそれが留年や退学、卒業延期の増加につながり、国家試験のストレート合格率の低下となって現れる」と指摘する。
国家試験対策に偏重した教育が行われていることも、いくつかの大学で認められた。「薬系大学において国試対策が手厚く行われていることを否定するわけではない。ただ、国試合格が卒業の目的のような教育で良いかというと、それは違う。卒業認定・学位授与の方針への到達を目指した教育プログラムの構築と運用が必要」と言う。
重要なのは各大学が問題点をチェックし、改善する内部質保証の取り組みだ。平田氏は「第2期では、新基準に基づいた自己点検・評価によって質の保証から質の改善への展開が望まれる。第三者評価ではそれを支援するフィードバックに努めたい」と話している。