統合失調症患者で低下する「ミスマッチ陰性電位」
東京大学は2月19日、ミスマッチ陰性電位を計測する際に、通常用いられるオドボール課題に加えて、メニースタンダード課題を用いることで、統合失調症のミスマッチ陰性電位の低下が、脳予測性に関連する成分の障害に由来することを明らかにしたと発表した。この研究は、日本学術振興会の越山太輔海外特別研究員、東京大学医学部附属病院精神神経科の切原賢治助教、笠井清登教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Schizophrenia Bulletin」(オンライン版)に掲載されている。
画像はリリースより
統合失調症を脳予測性の障害として説明しようとする研究が近年行われつつある。脳予測性を反映すると考えられている指標としてミスマッチ陰性電位があり、統合失調症の患者では、ミスマッチ陰性電位が低下していることが知られている。しかし、ミスマッチ陰性電位のメカニズムとして音の繰り返しによる慣れの影響も指摘されており、統合失調症の患者では、ミスマッチ陰性電位の低下が脳予測性の障害を反映するのか、他のメカニズムを反映するのか、結論が出ていなかった。
ミスマッチ陰性電位はモデル動物でも測定可能、病態の研究などの進展に期待
研究グループは、統合失調症の患者と健常者を対象にミスマッチ陰性電位を計測した。この時に、通常用いられる予想外の刺激と反復により慣れを起こす刺激の間の反応の差を取る方法(オドボール課題)だけでなく、いろいろな刺激をランダムに与える条件(メニースタンダード課題)もコントロールに加えることで、ミスマッチ陰性電位における脳予測性に関連する成分(逸脱反応)と、慣れの影響に関連する成分(慣れの反応)とを分離。実際に統合失調症の患者と健常者を比較した結果、統合失調症のミスマッチ陰性電位の低下は脳予測性に関連する成分の障害に由来することを明らかにした。
今回の研究成果は、統合失調症におけるミスマッチ陰性電位の低下が、脳予測性の障害を反映することを示唆している。ミスマッチ陰性電位はヒトだけでなく、サル、げっ歯類などの動物でも測定可能な指標だ。そのため、同研究で得られた研究結果をモデル動物に応用することで、ヒトで調べることが難しい統合失調症の病態の研究や、新たな治療法の効果を調べる研究が発展することが期待される。
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