JR大阪駅前にあるビルの医療モール内に開設された梅田薬局には、箱出し調剤が主流である欧州の薬局で汎用されている小包装製品の自動入庫払出装置を導入した。
モール内で統一した病診薬連携システムと連動させ、医師が電子カルテに入力した処方情報をもとに医薬品の個装箱を棚から取り出す調剤準備作業をほぼ自動化した。同意を得た患者については、受診2回目以降、院外処方箋を薬局窓口で受け取る前から調剤の準備を開始できる。
調剤ミスの抑制効果について、オープンから現在までの梅田薬局のアクシデント発生件数を調べた結果、診療科目や立地環境が似ている同社の「りんご薬局」では1年間で12件のアクシデントが発生したのに対し、梅田薬局ではゼロだった。
一方、患者の待ち時間短縮効果については、昨年12月に院外処方箋を応需した300例を対象に解析し、「りんご薬局」と比較した。その結果、病診薬連携システムとの連動がなかった再診患者の待ち時間は、「りんご薬局」の8分17秒に比べて梅田薬局では5分26秒と有意に短かった。渡部氏は、「これは自動入庫払出装置の効果と言える。待ち時間を3分の2に短縮する効果があった」と説明した。
さらに、梅田薬局で病診薬連携システムと連動させた場合の再診患者の待ち時間は2分53秒だった。渡部氏は、自動入庫払出装置と病診薬連携システムの併用によって「驚異的に早いスピードで薬を提供できた。待ち時間を3分の1に減らすことができた」と強調した。
渡部氏が薬局のロボット化に踏み切ったのは、世界最大のオンラインショッピングサイトを運営する米アマゾンによる医薬品ネット通販のピルパック買収を知ったことがきっかけ。
日本でもアマゾンが持つ強大な物流網を使って医療用医薬品が配達されるようになれば、大きな影響を受けると考え、アマゾンに勝つ薬局を作ることが使命になった。
渡部氏は「薬局実店舗とインターネットと物流を融合させて地域単位で医薬品のインフラを構築する。機械化されたかかりつけ薬局でアマゾンに勝つ」と展望を語った。