■中国・武漢は沈静化の兆し
世界保健機関(WHO)で新型コロナウイルス感染症の対策に当たっている進藤奈邦子氏は14日、横浜市内で開かれた日本環境感染学会の緊急セミナーで講演し、「中国の武漢は患者数が減少方向にあり、落ち着きつつある」との認識を示した上で、「いま世界中が心配しているのが日本」と国内の感染拡大に警鐘を鳴らした。その上で、「クルーズ船の集団感染が世界の重大事項になっていて注目度が高い。ぜひここで踏ん張って食い止め、世界の根絶のチャンスを逃さないでほしい」と訴えた。
進藤氏は、WHOが昨年末から新型肺炎に対して中国の研究者、医療従事者と対応を行ってきた経緯を紹介。「中国の対応に疑問を持っているかもしれないが、われわれはかなり自信を持って安心して見ていられる状況」との認識を示し、「中国からの情報提供は科学者からも含めて早かった」と述べた。
13日のWHOのレポートでは、「日本を除いてどの国からも新規患者が24時間報告されなかった」と指摘。中国政府による武漢封鎖の効果も「今月末ぐらいまでだろう」と見通し、「その後は(武漢のある)湖北省以外でどれだけ感染者を抑えられるかにかかっている」と強調した。
ただ、「武漢の疑い患者数も確定診断された患者数も、はっきりと減少の方向にある」と明言。武漢の医療従事者から「ようやくトンネルの先に光が見えてきた」との報告を受けたことを紹介し、「明るい報告で、希望をもらって嬉しかった」と語った。
現在、武漢では中国全土から2万人近い医療従事者が患者の診療に当たっているとされるが、「医療を必要とする全ての患者が隔離病棟で十分な治療を受けており、落ち着きつつある。武漢で患者数が減ってきていることは、非常に大きなニュースだ」と述べた。
一方、進藤氏は、日本で湖北省などの滞在歴のない和歌山県の50代医師が感染したことに「とても心配」と懸念を示し、「いま世界中が一番心配しているのが日本」と警鐘を鳴らした。
進藤氏は「クルーズ船の集団感染が世界の重大事項になっており、日々患者が増えていることや船内の人権問題もあって注目度が高い」と指摘。「一番は船内の人々がいかに人権を確保して快適に過ごせるかが重要だが、この機会に様々な研究もしていただきたい」と求めた。
今後、国内でもアウトブレイクの可能性が高まっているが、進藤氏は「もちろん収束させることも大事だが、日本でも発生前にきちんと準備しておき、発生後に対策と一緒に研究できないはずがない。日本から良いデータを出して世界に提供してほしい」と述べた。
その上で、「日本でぜひ感染を食い止めてほしい。日本が頑張ってくれるかで世界の方針が決まると思っており、ここで食い止められなければ、WHOは根絶をあきらめることになる。根絶のチャンスを逃さないためにも踏ん張ってもらいたい」と訴えた。