致死率の高い重症な薬疹「スティーブンス・ジョンソン症候群」「中毒性表皮壊死症」
新潟大学は2月13日、致死率の高い重症な薬疹であるスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症患者において、血液中のRIP3が非常に高いことを見出し、血液中のRIP3の測定が早期診断に有用なことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の長谷川瑛人(大学院生)、阿部理一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology : In Practice」に掲載されている。
画像はリリースより
スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症は、まれで、死亡率の高い重篤な疾患であるため、早くに診断し、治療を開始する必要がある。しかし、症状が軽度な発症早期には、軽症の薬疹との鑑別が難しいことがあり、早期に正確な診断をするための検査法が必要とされている。
先行研究により研究グループは、スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症などの重症薬疹では、皮膚の細胞がネクロプトーシスというタイプの細胞死を起こしていることを解明した。ネクロプトーシスを起こした細胞は、RIP3という分子を細胞内から細胞外へ放出することが報告されている。そこで今回、研究グループはRIP3の細胞外放出に着目し、重症薬疹の診断や、重症度の判定に用いることができるかを解析した。
ネクロプトーシスによって、皮膚細胞でもRIP3を細胞外へ放出
今回、研究グループは、皮膚の培養細胞を用いて、ネクロプトーシスを起こした皮膚の細胞が、細胞外へRIP3を放出するかを解析。通常型薬疹患者や、重症薬疹患者の血液中のRIP3を測定し、病型ごとに比較した。また、病型だけでなく、粘膜症状や肝臓、腎臓などの臓器障害の程度と血液中のRIP3濃度が相関するかどうか、治療開始後にRIP3の値がどのように推移するかを解析した。
その結果、TNF-α、Smac、zVADによるネクロプトーシス刺激を加えた培養表皮細胞で、RIP3の発現が上昇していることを確認。また、ネクロプトーシス刺激を加えた培養細胞の培養液では、無刺激の細胞の培養液と比較して、RIP3の濃度が上昇していた。このことから、皮膚の細胞でもネクロプトーシスを起こすと、RIP3を細胞外へ放出することがわかった。
RIP3、重症薬疹の治療効果判定にも有用な可能性
次に、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症の患者22人、通常型薬疹の患者(重症多型紅斑型19人、軽症多型紅斑型5人、播種状紅斑丘疹型6人)、別のタイプの重症薬疹である薬剤過敏症症候群の患者4人、健常者5人の血液中のRIP3を測定し、比較した。その結果、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症群でRIP3が有意に高値だった。また、眼や口腔内、陰部などの粘膜症状や肝臓、腎臓などの臓器障害の程度とRIP3の値が相関することが明らかになった。このことから、血液中のRIP3の測定が、重症薬疹の診断や重症度を判定するために有用な検査法であることがわかったとしている。
さらに、重症薬疹患者の治療開始後のRIP3の推移を解析。その結果、治療開始後の症状が改善に向かった患者のRIP3は低下し、治療開始後も症状が増悪した患者のRIP3は上昇した。以上の結果から、RIP3は重症薬疹の治療効果の判定にも有用である可能性が示された。
研究グループは、重症薬疹の診断マーカーとして2019年に発見した「galectin-7」とあわせることで診断の精度がより向上する可能性があるとし、今後も解析を継続する予定だという。また、RIP3が肝臓や腎臓などの臓器障害が高度な患者でより上昇していたことから、重症薬疹では皮膚以外の臓器でもネクロプトーシスが起きている可能性がある。研究グループは、今後、さらなる病態の解明を目指し、研究を進める予定だとしている。
▼関連リンク
・新潟大学 プレスリリース