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ASMD治療薬オリプダーゼアルファ、成人P2/3試験と小児P2試験で肯定的な結果-仏サノフィ

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2020年02月10日 PM12:15

希少疾患ライソゾーム病の一種「

仏サノフィ社は1月30日、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)の成人患者と小児患者を対象に開発中の、ヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ製剤olipudase alfa(遺伝子組換え)を評価する2件の臨床試験で、肯定的な結果が得られたと発表した。

ASMDは、歴史的にニーマン・ピック病(NPD)A型およびB型とも呼ばれる進行性の希少疾患で、細胞内器官のライソゾームで、スフィンゴミエリンと呼ばれる脂質を分解する酵素である酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)の活性が低いために現れるライソゾーム病の一種だ。ASMが存在しない、または活性が低い場合、スフィンゴミエリンは適切に代謝されずに細胞内に蓄積する。やがて細胞は死滅し、内臓の機能に異常が出現。ライソゾーム酵素であるASMの欠損は、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1の遺伝子(SMPD1)の変異により現れる。欧米でのASMD患者数は、約2,000人と推定されている。

ニーマン・ピック病A型は、神経症状が急速に進行し、中枢神経系の合併症により小児期の早い段階で死に至る疾患。ニーマン・ピック病B型は、重篤で生命が脅かされる可能性のある疾患で、主に肺、肝臓、脾臓と心臓に症状が現れる。ニーマン・ピック病A/B型は、A型とB型の中間にある疾患で、神経症状は患者によってさまざま。ニーマン・ピック病C型と呼ばれる疾患もあるが、これはASMDとは無関係の疾患だ。

成人患者36名対象のP2/3試験、肺機能の改善など確認

ASCEND試験は、16か国24施設でASMDの成人患者36名が参加した第2/3相無作為化二重盲検試験。52週間にわたりプラセボまたはolipudase alfaを最大3mg/kgで隔週静脈内投与した。試験の主要評価項目として、ASMDの主な臨床所見である進行性肺疾患と脾腫大の2項目を検討。試験計画書では、これら2つの主要評価項目のうち1項目が達成した場合、肯定的な結果が得られたと判定することと定義した。これら2つの主要評価項目のうち、肺機能の改善は肺のガス交換能を調べる検査である一酸化炭素肺拡散能(DLco)について計算式から正常予測値を求め、それに対するパーセントとして評価。同試験ではこの項目を達成したため、ASCEND試験から肯定的な結果が得られたと判断した。第52週時点の相対的改善は、olipudase alfa群22%、プラセボ群3%だった。2群間の差(19%)は、統計学的に有意だった(p=0.0004)。

続いて、脾臓の大きさは、正常な脾容積との比較の倍数(MN)として示し、ベースラインからの変化率を評価。試験では、この項目も試験計画書の規定を満たした。olipudase alfa群の脾容積は39.5%減少したのに対し、プラセボ群では0.5%増加。2群間の差(40%)は、統計学的に有意だった(p=0.0001)。

また、米国では、患者がSplenomegaly Related Score(SRS、脾腫関連スコア)を用いて関連症状を評価し、この結果をPatient-Reported Outcome(PRO、患者の報告に基づくアウトカム)として脾容積とあわせた評価を実施。olipudase alfa群においてSRSはベースラインから8.0ポイント低下したのに対して、プラセボ群では9.3ポイント低下し(p=0.70)、脾容積とSRSを組み合わせた評価項目では、試験計画の規定に到達しなかった。

52週間の試験期間中、両群のいずれの患者も1件以上の有害事象がみられた。発現件数は、olipudase alfa群で242件、プラセボ群で267件。重度の有害事象の発現件数は、olipudase alfa群で3件、プラセボ群で13件だった。重篤な有害事象は、olipudase alfa群で5件、プラセボ群で11件。いずれも臨床試験との関連はないと判断された。臨床試験の中止や試験の脱落に至った有害事象はなかった。同試験内で高頻度にみられた有害事象(有害事象の発生率が2%以上で、olipudase alfa群の2名以上にみられ、olipudase alfa群での発現率がプラセボ群より高い有害事象と定義)は、頭痛、鼻咽頭炎、上気道感染、咳嗽、および関節痛だった。

小児患者20名対象のP2試験、安全性と忍容性を評価

ASCEND-Peds試験は、6か国の小児患者(出生後~18歳未満)が20名参加した第2相非盲検単群試験。神経症状に急速な進行がみられる患者は、除外された。同試験では、olipudase alfaの最大用量を3mg/kgとして隔週静脈内投与を64週間行った場合の安全性と忍容性を評価することを主な目的として実施した。

試験の結果、64週間の治療期間中、全ての患者に1件以上の有害事象がみられた。有害事象の多くは軽度と中等度で、1名は重度で重篤なアナフィラキシー反応が現れ、olipudase alfaとの関連があるとされた。治療に関連する重篤な有害事象は、3名中5件で出現。1名では、症状を伴わない一過性のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)増加が2回現れ、1名ではじんましんと発赤が1回ずつ現れ、1名でアナフィラキシー反応が1回現れた。有害事象により治療中止に至った患者はいなかった。高頻度にみられた有害事象(有害事象の発生率が2%以上で、olipudase alfa群の2名以上にみられた有害事象と定義)は、発熱、咳嗽、嘔吐、鼻咽頭炎、下痢、頭痛、上気道感染、挫傷、腹痛、鼻閉、発疹、じんましん、引っかき傷および鼻出血だった。

また、同試験では、副次評価項目として、肺疾患と脾腫大の進行を評価。1年間(52週)の治療後のDLco(正常予測値に対する百分率)は、ベースライン時点で検査が実施できた9名(5歳以上で、検査が実施できる患者)で、平均33%上昇した。また、第52週時点で、脾容積のMNは平均で49%減少した(範囲:23~61%)。

ASMを補充してスフィンゴミエリンの分解を促す製剤、承認申請は2021年下半期開始予定

は、欠損している、または機能が低下しているASMを補充し、スフィンゴミエリンの分解を促す目的で用いる酵素補充療法の製剤。また、同剤はASMD治療薬として臨床開発後期に入った、世界初かつ唯一の酵素補充療法の薬剤だ。現在、ASMDの治療薬として承認されている医薬品はない。

今回発表された臨床試験の結果について同社は、今後学会で発表し、世界各地での承認申請のデータとして提出する予定だとし、承認申請は2021年下半期から開始となる見込みだとコメントしている。

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