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ミトコンドリア病「リー脳症」、日本人予後調査の結果を発表-千葉県こども病院ほか

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2020年02月07日 PM12:30

日本のリー脳症166例の診断後の現況を、分子遺伝学的特徴を含めて調査

千葉県こども病院は2月6日、日本人のリー脳症患者166人の分子遺伝学的な特徴と予後について分析を行い、原因遺伝子ごとの詳細な自然歴について、初めて明らかにしたと発表した。この研究は、千葉県こども病院遺伝診療センターの村山圭センター長(同院代謝科部長/千葉県がんセンター研究所主任医長)らの研究グループが、、日本大学と共同で行ったもの。研究成果は、先天代謝異常分野で権威ある科学雑誌「Journal of Inherited Metabolic Disease」に掲載されている。


画像はリリースより

ミトコンドリア病は5,000人に1人の頻度で発症するエネルギー代謝系の先天代謝異常症。リー脳症は小児期に発症するミトコンドリア病の代表的な病型の1つ。乳幼児期に発症し、精神運動の発達の遅れや退行を示す難治性の慢性進行性の疾患だ。予後は不良で、発症後に数年で死亡するとされている。原因遺伝子は、ミトコンドリア遺伝子だけでなく核遺伝子など多岐に渡る。しかしながら、これまで日本におけるリー脳症の長期的な予後は全く明らかになっていなかった。

、それぞれで予後に影響の遺伝子が判明

166例のうち、調査時点で生存していたのは124例であり、死亡が40例、追跡不能が2例だった。生存124例を調査した時点における年齢は、中央値が8歳であり1歳から39歳まで分布していた。発症から調査時点または死亡時点までの罹病期間の中央値は、生存例で91か月、死亡例で23.5か月だった。死亡40例の9割が6歳までに亡くなっていた。生後6か月未満で発症した場合、生後6か月以降の発症例と比較して有意に生存率が低く、特に新生児期に発症した例は、全例が死亡または寝たきりだった。

原因遺伝子と予後について、原因遺伝子の変異がわ分かっている103例について分析した結果、ミトコンドリア遺伝子のMT-ATP6遺伝子(m.8993T>G変異)やMT-ND5遺伝子の変異によるリー脳症は予後が不良である一方で、核遺伝子のECHS1遺伝子やSURF1遺伝子、NDUFAF6遺伝子の変異によるリー脳症の予後は比較的良いことが判明。発症時期が予後にもたらす影響は、原因遺伝子によっても異なることがわかった。生存例の臨床症状は多くの場合に重篤だったが、中には自発呼吸を維持し、経口摂取が可能で、歩行できる例もあった。研究グループは、「今回の報告は、日本で初めて取りまとめられたリー脳症の予後に関する大規模な報告であり、治療薬の開発や臨床試験に必要な基礎的エビデンスを提供するものである」と、述べている。

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