国立感染症研究所は1月31日、中国の武漢市を中心に感染拡大している新型コロナウイルスの分離に成功したと発表した。分離したウイルスは感染の有無を判断する検査キット開発を最優先、抗ウイルス薬やワクチンの開発などに活用する。同ウイルス対策を充実させるため、国内外の研究機関等にも配布する予定。脇田隆字所長は、「このウイルスで研究開発を進められるので、今後の新型コロナウイルス対策により役立つ仕事を行っていきたい」との考えを示した。
感染研は、同ウイルスの感染が確認された国内患者の検体からウイルスを分離。分離したウイルスと現在、問題となっている新型コロナウイルスの遺伝子配列が99.9%一致したことから、「ほぼ同じウイルスと考えていい」との見方を示した。
既に中国とオーストラリアの研究機関が同ウイルスの分離に成功する中、国内で分離した理由について、脇田氏は「ウイルスの共有には手続きや国際条約等の制限があり、時間がかかる。国内でウイルスを持つことが今後の研究や検査にとって重要」と述べた。
ウイルスの用途については、検体を感染研に運んでから検査でウイルスの有無が判明するまでに6時間程度かかる現状を踏まえ、「インフルエンザの迅速診断のような手軽に感染の有無が判断できる迅速診断キットが今後診療の場でも必要となる」とし、検査法開発を最優先課題に位置づけた。
具体的な開発期間に関しては、「良い抗体があれば、1カ月で開発できるのではないか」との見方を示した。
抗ウイルス薬の開発にもつなげる。「スクリーニングで候補薬を探し、既存の承認薬が効けばすぐに臨床試験を実施できる」との考えを示す一方、「通常はそれほどうまくいかないので、新たな化合物から開発すると年単位の開発時間がかかる」とした。
ワクチン開発にも活用する考えで、「通常は年単位の時間がかかるので、すぐにできるとは言いにくい」としつつ、「様々な方法を総合的に試して開発につなげたい」と開発に意欲を示した。
新型コロナウイルス対策に役立てるため、ウイルスを国内外の研究機関等にも配布する。国内では、ウイルスをしっかりと管理できる施設であることを確認した上で提供する。海外に対しては、世界保健機関(WHO)のウイルス供与に関する枠組みに委託した上で配布する考えだ。