日本人対象の調査で大豆食品摂取による死亡/疾患リスクについて検討
国立がん研究センター1月30日、国内11の保健所管轄の住民(40~69歳)を調査し、発酵性大豆食品の摂取量が多いほど総死亡リスクが低い可能性が明らかになったと発表した。これは、同センター社会と健康研究センター予防研究グループの多目的コホート研究によるもの。研究成果は、「The BMJ」に掲載されている。
画像はリリースより
近年、植物性の食品のひとつとして大豆食品を多く摂取することの健康への影響について関心が高まっている。大豆にはタンパク質や食物繊維、ミネラル、イソフラボンなどのさまざまな成分が含まれ、特に納豆や味噌といった発酵性大豆食品は加工中にこれらの成分の消失が少ないことから、これまでにも発酵性大豆食品摂取と血圧の関連や納豆の摂取と循環器疾患死亡リスクとの関連などが報告されてきた。しかし、大豆食品全体と死亡リスクの関連はこれまでの研究ごとに結果が異なっており、発酵性大豆食品と死亡リスクの関連についての報告は限られていた。そこで、研究グループは多目的コホート研究において、大豆食品、発酵性大豆食品摂取量と死亡リスクとの関連について検討した。
1990年と1993年に、11保健所(岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田、呼称は2020年現在)の管轄地域在住だった40~69歳の人のうち、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答し、がん/循環器疾患になっていなかった約9万人について2012年まで追跡した。研究開始5年後に実施した食事調査では、総大豆食品・発酵性/非発酵性大豆食品・各大豆食品(納豆、味噌、豆腐)の摂取量を集計し、等分に5つのグループに分け、その後、平均約15年間の死亡(総死亡・がん死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡・脳血管疾患死亡)との関連を男女別に分析。把握できている他の要因(年齢、地域、肥満度、喫煙、飲酒、身体活動など)について統計学的に調整した。
納豆の摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが男女共に低い傾向に
調査の結果、「総大豆食品摂取量」は、死亡との明らかな関連は見られなかったが、男女ともに「発酵性大豆食品」の摂取量が多いほど総死亡(死亡全体)のリスクの低下がみられた。次に、個々の大豆食品のうち納豆、味噌、豆腐について死亡リスクとの関連を検討したところ、女性では納豆や味噌の摂取量が多いほど死亡リスクが低下していたが、男性ではその傾向はみられなかった。豆腐については男女ともに低下の傾向はみられなかった。また、死因別にみると、総大豆食品、発酵性・非発酵性大豆食品、各大豆食品の摂取量はいずれもがん死亡との関連は認めなかったが、循環器疾患死亡については男女ともに納豆の摂取量が多いほどリスクが低下する傾向を認めた。
今回の研究では、植物性タンパク質の主な摂取源でもある大豆製品の中でも、発酵性大豆食品が関わっている可能性が示された。これらは日本特有の食品でもあり、日本人の長寿の要因の一つかもしれない。発酵性大豆食品は加工の過程で成分の消失が少ないことなどが、明らかな関連を認めた理由のひとつとして考えられる。「ただし、今回の研究で取り除ききれなかった要因や把握できなかった要因が結果に影響した可能性や、追跡中の食事変化については考慮していないという点も考慮しなければならない。また、この調査では循環器疾患にかかった人を除いているため今回の結果はあてはまらない」と、研究グループは述べている。