薬局版QIは、主に薬局薬剤師の業務プロセスの質を数値化する指標のことである。継続的にQIスコアをモニタリングし、必要に応じて対策を講じることにより、業務の質改善に役立てることができる。
胃保護薬の処方なしで非ステロイド性消炎鎮痛薬が処方された高齢患者のうち、薬局薬剤師が医師に胃保護薬追加の疑義照会を行った患者の人数など、実施すべき業務の遵守率で評価することが多い。薬局版QIの開発や活用への関心は世界的に高まっており、米国やオランダのように社会実装されている国もある。
今回の研究では、「高齢者の医薬品適正使用の指針」をもとに、約120種類のQIを作成。「ポリファーマシー解消に向け、定期的に高齢患者の減薬意向を把握しているかどうか」など、一般的にチェックすべきことや薬剤ごとに薬剤師が実践すべき内容をQIとして設定した。
6剤以上の内服薬を4週間以上服用する75歳以上の高齢者を対象に、処方箋を応需した薬局薬剤師が指針で求められた適正使用をどれだけ実践できたかをQIで評価する。薬局の現場で試行的に使ってもらい、外来高齢者ケアの質の可視化に向け、約120種類のQIのうち実際に役立つQIを検証し、運用に向けた課題を把握する。
アウトカムについても検証を行う。QIの活用による服用薬剤調整支援料、重複投薬・相互作用等防止加算、服薬情報等提供料、外来服薬支援料の算定件数の増減、加算の算定に関係するQIを明らかにする考えだ。
昨年3月まで実施した第一弾の臨床研究「JP-QUEST」では、薬局薬剤師による在宅業務の質の可視化に取り組んだ。同指針や国内外のQI、専門家の意見をもとに53種類のQIをリストアップ。その中から、医師、看護師、薬剤師の評価を経て45種類のQIを作成し、65薬局の薬剤師の参加を得て6カ月間評価した。
作成したQIは、「ループ利尿薬を服用する在宅高齢患者のうち、電解質・腎機能のモニタリング結果を最低3カ月ごとに薬剤師が把握できた割合はどれくらいか」などである。
これらの有用性を様々な切り口で評価したところ、45種類のうち20種類のQIは、▽QIの分母・分子を抽出できる▽QIの分母に該当する患者がいる▽QIスコアに改善の余地がある▽QIスコアにバラツキがある――という要件を満たし、現場で活用できるQIになり得ることが分かった。さらに、20種類のQIのうち、QIスコアが変動するという要件を満たしたQIに絞ると9種類を抽出できたという。