新潟県三条市の特定検診・レセプト・介護保険ビッグデータを統合解析
新潟大学は1月27日、新潟県三条市における特定検診と診療報酬請求(レセプト)と介護保険のビッグデータを統合解析し、生活習慣(病)と要介護状態に陥るリスクとの関係を解明したと発表した。この研究は、同大医学部血液・内分泌・代謝内科研究室の曽根博仁教授、藤原和哉准教授らと、株式会社JMDCの研究グループによるもの。研究成果は、英国の国際専門誌「BMJ Open Diabetes Research & Care」掲載されている。
画像はリリースより
超高齢社会を迎えた日本では、要介護状態を予防し健康寿命を延ばすことが国民的課題だ。糖尿病をはじめとする生活習慣病、または運動不足によって、動脈硬化疾患や死亡のリスクが上昇することが知られている。生活習慣病や運動不足が、要介護状態に陥る、つまり健康寿命が終わるリスクをどの程度上げるかについて、これまで大規模精密に検討された研究はまれだった。
同研究では、特定検診結果を含む健康保険レセプトと介護保険データベースとを合わせた分析により、2012~2015年に健診を受けた、過去に心疾患、脳血管疾患、介護認定の既往のない39~98歳の9,673人を抽出。それらの対象者における要介護状態(介護保険における要支援または要介護)の新規発生について縦断的に検討した。さらに年齢、肥満、高血圧、脂質異常症、喫煙などの、既知の身体機能低下に関連するリスク因子の影響を除いて、糖尿病を始めとする生活習慣病と運動習慣(厚生労働省特定検診質問票の「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2回以上1年以上継続」に基づく)が、介護リスク発生にどの程度影響するかを検討した。
介護発生リスク、糖尿病・高血圧・脂質異常症・運動習慣なし全てありで、いずれもない場合の約4倍に
研究の結果、追跡期間(中央値)3.7年で要介護状態の新規発生は165人だった。糖尿病、運動習慣がないことは、要介護発生のリスクをそれぞれ1.7倍、1.8倍上昇させていたという。介護発生リスクは、「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「運動習慣なし」の4項目全てを満たすと、いずれもない場合の約4倍に達した。
また、糖尿病と運動習慣のあるなしで、対象者を4群に分けて介護発生リスクを検討した結果、糖尿病がなく運動習慣がある人に対して、糖尿病と運動習慣のいずれもない人では要介護リスクが約1.8倍、糖尿病があり運動習慣がない人では約3.2倍上昇した。糖尿病があり運動習慣がある人の要介護リスクは、糖尿病がなく運動習慣がある人との有意差が認められなかった(1.68:信頼区間0.7-4.04)。
今回の結果は、糖尿病患者の場合であっても、運動習慣があれば、介護発生リスクを非糖尿病者並みに低減できる可能性を示唆しており、介護予防の面からも生活習慣病予防とともに、運動習慣をもつことが重要であると考えられる。研究グループは今後、介護発生を予防する、すなわち健康寿命を延ばす因子についての検討を進めていく予定だとしている。
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・新潟大学 研究成果