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気分の改善ややる気の促進に、脳内「ポリシアル酸」が重要-九大ほか

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2020年01月27日 AM11:00

-NCAMが、神経活動の制御に関与の可能性

九州大学は1月23日、海馬の「ポリシアル酸」が、気分の調節や「やる気」に関わるセロトニンシグナル伝達と抗うつ薬の作用発現に重要な役割を果たしていることを発見したと発表しました。この研究は、同大大学院医学研究院の山田純講師と同・神野尚三教授の研究グループが、北海道大学の渡邉雅彦教授、名古屋大学の佐藤ちひろ教授らと共同で行ったもの。研究成果は、米国神経科学学会誌「The Journal of Neuroscience」に掲載されている。


画像はリリースより

シアル酸は細胞表面に存在する糖の1種で、母乳や卵に多く含まれることが知られている。また、シアル酸が多数結合したポリシアル酸(PSA)は、胎児期の脳に一時的に発現し、神経系の正常な発達に重要な役割を果たすことも明らかにされている。一方で、大人の脳の神経細胞()の一部にもポリシアル酸が発現していることが報告されている。最近の研究で、神経細胞接着分子()上に存在するポリシアル酸(PSA-)が、さまざまな神経栄養因子や神経伝達物質と結合し、神経活動の制御に関与している可能性が示唆されているが、詳細については明らかにされていなかった。

認知と気分を制御している海馬では、比較的一様な興奮性ニューロンと、複数のグループに分けられる抑制性ニューロン(GABAニューロン)から成る神経回路が形成されている。研究グループは今回、マウス海馬のGABAニューロンの一部にポリシアル酸が発現していることに着目し、その機能に関する研究を行った。

「やる気」の回復を促す脳内分子として、ポリシアル酸が有用である可能性

その結果、ポリシアル酸を発現している海馬のGABAニューロンは、不安や食欲の制御に関わる神経ペプチドであるコレシストキニンが陽性であり、他のグループのGABAニューロンに比べ、セロトニンシグナルを伝達するシナプスの入力が多いことが示された。また、うつ状態のマウスに抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、SSRI)を投与すると、ポリシアル酸の発現とセロトニンシグナル伝達の指標であるp11タンパクの発現がいずれも上昇したが、海馬からポリシアル酸を除去すると、抗うつ薬によるp11タンパクの発現上昇が起こらなくなった。さらに、うつ状態のマウスの海馬からポリシアル酸を除去すると、抗うつ薬の作用が失われ、うつ状態が改善しないこともわかった。これらの結果は、ポリシアル酸はセロトニンシグナル伝達を増強し、気分の改善や「やる気」の回復を促す分子であることを示唆している。

今回の研究成果により、今後ポリシアル酸のセロトニンシグナル伝達増強作用に基づき、うつ病の治療法が新たに発展することが期待される。

研究グループは、「近年、うつ病の治療には抗うつ薬であるSSRIや、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)などが広く用いられている。しかし、満足できる効果が得られず、困っている患者は未だに少なくない。これからの研究によって、「やる気」の回復を促す脳内分子としてのポリシアル酸の有用性について、さらに明らかにしていきたいと考えている」と、述べている。

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