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受精卵の初期分裂で染色体異常があっても胚盤胞に到達すれば出生の可能性-近大ほか

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2020年01月27日 AM11:15

マウス受精卵をライブセルイメージングで観察

近畿大学は1月22日、マウス受精卵の染色体の動きを生きたまま顕微鏡で観察しその後移植することで染色体分配異常と出生の関係を調べたところ、初期の分裂で異常が見られた胚からも胚盤胞期に到達した受精卵は子になりうることを発見したと発表した。この研究は、近畿大学生物理工学部遺伝子工学科の山縣一夫准教授と、愛知県名古屋市の浅田レディースクリニック、扶桑薬品工業などの研究グループによるもの。研究成果は、英国の国際電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより

受精卵が染色体分配に失敗すると、染色体数の異常を引き起こし、不妊につながると考えられている。ヒト受精卵のおよそ7割は染色体が異常な細胞と正常な細胞が混じった、モザイク状態であることが知られている。異常な細胞がどれだけ含まれているのかを間接的に知るために、受精卵から細胞を一部回収し、すりつぶしたうえで染色体を調べる方法がとられているが、回収した細胞がどれだけ全体を反映しているのか不明であり、染色体分配の異常と発生および出生の関係を直接評価することはできなかった。今回の研究では、マウス受精卵を用いて、ライブセルイメージングにより受精直後の染色体分配を胚全体で連続的に4日間直接観察し、その後移植することで染色体分配異常が生じたタイミングや染色体分配異常の程度によってその後の発生や出生に違いが生じるのかを調べた。

胚盤胞までの発生過程で染色体数が異常な細胞は除去される可能性

マウス受精卵に染色体を赤色に染める蛍光プローブを顕微鏡下で注入し、超高感度カメラを搭載したスピニングディスク式共焦点レーザー顕微鏡(CV1000、横河電機)で、受精から4日目までライブセルイメージングを実施。その後胚盤胞期胚となったものを移植することで子として産まれるかどうかを調べた。撮影した動画をさかのぼって解析したところ、受精した直後から8細胞期までに染色体分配に異常がみられた受精卵の半数(31/66)は胚盤胞期まで到達せず、一方で、正常な分配を示した受精卵ではほぼすべて(55/57)が胚盤胞期に到達することがわかった。

次に、産子に至った胚とそうでない胚の動画をさかのぼって、胚盤胞期まで到達した受精卵の移植結果を初期の染色体分配と紐づけて調べたところ、異常を起こした受精卵からも正常であった受精卵からも同等の割合で子が得られることがわかった。受精後はじめての細胞分裂の時に染色体分配に失敗し、その細胞が増えていけば50%~100%の細胞が異常を示すはずだが、驚くべきことに、そのような受精卵からも胚盤胞まで生育させて移植することで子が得られることがわかった。次世代シーケンサーを用いて、はじめての染色体分配に失敗した胚盤胞のすべての細胞の染色体を調べてみると、50%の細胞に異常がみられる受精卵と、15%の細胞に異常がみられる受精卵が観察された。予想されるよりも異常な細胞の割合が小さい受精卵の存在は、胚盤胞までの発生過程において染色体数が異常な細胞が除去されるメカニズムが働くことを示唆している。

今回の研究により、マウスにおいては受精直後に染色体分配に異常を起こしながらも胚盤胞期まで到達した受精卵からは子が得られることがわかった。一方で、受精直後の染色体分配異常は胚盤胞期までの発生に大きく影響することがわかった。これらの結果より、現在不妊治療現場で検討され始めている着床前胚の染色体検査において、生育した受精卵から細胞を一部回収し、すりつぶしたうえで染色体を調べる方法は、その後の産子の可否を予測するには不十分であることが推測された。また、既報のように受精卵の細胞数を減らしてしまうためにかえって妊娠率の低下を起こす可能性も考えられる。また今回、染色体分配異常を示さなかった受精卵は、胚盤胞期になったときに異常な細胞を含まなかったことから、染色体分配を観察することの有用性が示唆された。研究グループは、「今後、染色体分配と胚発生の関係をもとにした全く新しい、細胞の回収を必要としない染色体検査が開発されることが期待される」と、述べている。

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