「MID-NET」は、2018年4月から本格運用を開始。19年度の実績見込みはPMDAによる行政利活用が28調査であるのに対し、製販後調査での利用は1品目と想定よりも大きく下回っている。利用料で運営を行う事業モデルだが約7億円の赤字と苦しい状態が続く。
佐藤氏は、「国と業界の共通財産であり、何とか有効活用していきたい。製販後調査の利活用件数を増加させるための対策が必要になる」と述べた。
こうした状況を打開するために、データ規模の拡大を最優先課題に挙げた。全国10拠点23病院で集積した約505万人の患者データを1000万人まで集める計画を掲げており、このほど徳州会グループ10病院を協力機関に追加した。臨床研究中核病院や国立病院機構などが保有する医療情報データベースとの連携を進め、統合解析を行えるようにする。
患者データが大病院に集中し、患者集団に偏りがあるため、ナショナルデータベース(NDB)など他の公的データベースとの連結解析も検討する方向だが、佐藤氏は「NDBと連携するためには、医療等IDを活用することがカギとなるが、実現には制度的な改善が必要になる」と課題を指摘した。
また、製薬企業のニーズに対応し、利便性向上も図る。4月からMID-NETの利活用申し出前に、類薬に関する情報や該当する薬剤の処方患者数などの情報を入手できるよう運用手順を改める。
製販後調査で目的に合ったデータベースを選定する際に、MID-NETの実施可能性を検討してもらい、利用につなげるのが狙いである。
これまで多大な時間を要していた製販後調査の利活用手続きや承認プロセスの見直しについては、MID-NETのガイドライン改正が必要になることから、21年4月の運用を目指していく。
一方、行政による利活用では、早期安全性シグナルモニタリングを実施する。これまでPMDAでは、安全性情報が集積された医薬品に関して、MID-NETを活用して副作用との因果関係を評価するのが中心だった。
今後は、治験データが乏しい条件付き承認医薬品などについて、副作用の兆候となる安全性シグナルの解析を定期的に実施し、検知した安全性シグナルから検討対象となる副作用を追跡することで、安全対策に必要なエビデンスを提供していきたい考え。
佐藤氏は「海外規制当局と連携し、同一目的での疫学調査を多国間で実施していきたい」と述べ、国際連携強化を図っていく意向を示した。