厚生科学審議会感染症部会の新型インフルエンザ対策に関する小委員会は20日、今後の抗インフルエンザウイルス薬の備蓄方針を議論し、「バロキサビルマルボキシル」(販売名:ゾフルーザ)の備蓄を見送った。現状では臨床データが不足していると判断したもので、「詳細なデータや経験を蓄積した時点で備蓄を再考する」と結論づけた。
新型インフルエンザに対する国の方針として、国と都道府県で抗インフルエンザ薬を4500万人分備蓄する目標を示しており、現在はオセルタミビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)など5種類を備蓄している。
一方、ゾフルーザについては、日本感染症学会の提言で「成人に関する臨床データが乏しく、現時点では推奨・非推奨は決められない」「免疫不全患者や重症患者では、単独での積極的推奨はしない」など備蓄に消極的な内容が記載されている。
こうした現状を踏まえ、厚生労働省はゾフルーザについて、「直ちに備蓄はせず、基礎と臨床でのエビデンスを蓄積し、関係学会の臨床上の位置づけを踏まえた上で引き続き検討すべき」と小委員会に提案した。
これに対して、長谷川秀樹委員(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長)は「免疫がない状態での感染が起きやすいのではないかという状況にある。この点をもう少し臨床データと突き合わせて検討した上で、備蓄するのであれば備蓄する形が良い」との考えを示した。
齋藤昭彦委員(新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野教授)も、「データがあれば、他の抗インフルエンザ薬と組み合わせることで、様々な効果が期待できる薬剤」と評価。
「重症化した症例に対するコンビネーションセラピーによる効果などをデータで出してもらいたい」と注文をつけた。
これらの意見を踏まえて、谷口清州委員長(国立病院機構三重病院臨床研究部長)は、「詳細なデータや経験を蓄積した時点で備蓄を再考する」と結論づけた。