胃がん再発因子の約4割は「腹膜播種再発」
大阪市立大学は1月7日、胃漿膜表面から腫瘍までの距離(DIFS)測定が、胃がん患者の再発予測に有用であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科がん分子病態制御学・消化器外科学の八代正和研究教授、栂野真吾大学院生・医師らの研究グループによるもの。研究成果は、科学雑誌「PLOS ONE」にオンライン掲載されている。
胃がんは、日本のがん死亡者数の第3位で、5年生存率は約60%の悪性度の高いがんである。胃がんの死因には、手術後の再発が大きく影響している。特に、がん細胞が腹膜腔に散らばる「腹膜播種再発」が最も多く、胃がん再発の約40%を占めている。がん細胞が腹膜腔に露出遊離している胃がんに腹膜播種再発が多いが、がんが腹膜腔に露出していない胃がん(T3胃がん)でも、腹膜播種再発を起こすことが少なからずある。そこで、研究グループは、T3胃がんのどの因子が腹膜播種再発に影響するか検討した。
胃がん術後に高性能顕微鏡でDIFS測定、234㎛より短いと再発リスク高
画像はリリースより
胃がん根治手術を行った患者からT3胃がん患者96人を抽出、腹膜播種再発はそのうちの16人だった。因子を調べるために、胃漿膜表面からがん細胞までの距離を高性能顕微鏡で測定したところ、胃漿膜表面(腹膜)からがん細胞までの距離(DIFS)が、腹膜播種再発患者は156㎛に対し、再発していない患者は360㎛と明らかに差があることが判明。特に、DIFSが234㎛より短い胃がん患者は、明らかに腹膜播種再発を起こす頻度が高く、予後が不良であった。この検証結果より、腹膜播種再発のリスク値は234㎛であることわかった。
根治手術を行った胃がん患者のDIFSを測定し、測定値が234㎛より短い胃がん患者に対して、再発予防のためにより強力な抗がん剤の投与を行うなど、手術後の治療方針に役立つ可能性がある。栂野医師は、「腹膜播種再発は、胃がん手術患者の生存率を著しく低下させる。高性能の顕微鏡を用いて、がん細胞の先端部から胃壁の外膜(腹膜)までの距離を1分程度かつ精密に(㎛レベル)測定することで、腹膜播種再発を予測することができる。本研究の結果は、胃がん手術後の治療方針に大きく影響すると考えられる」と、述べている。
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