じんましんの定性的な臨床データと数理モデルを融合
広島大学は1月10日、じんましんの定性的な臨床データと数理モデルを融合することにより、じんましんで見られる発疹(膨疹)の多様な形を数理モデルで再現することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院統合生命科学研究科の李聖林准教授、医系科学研究科皮膚科学の秀道広教授、高萩俊輔助教、柳瀬雄輝助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS Computational Biology」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
じんましんは、皮膚の発赤を伴う腫れ(膨疹)が短時間のうちに現れたり消えたりすることを特徴とする。なかには食物や薬剤が原因のこともあるが、多くは原因不明で虫刺症様、環状、花びら状、あるいは線状などの形をとり、大きさでは粟粒くらいの小さいものから手のひらサイズ、あるいはそれ以上のものまで多様な形を示す。それらは、ある程度までじんましんの病型あるいは個々の患者ごとに関連する特徴があるが、これまでどのようにしてそれらの形が形成されるかは明らかになっていなかった。
膨疹の形成にはヒスタミンの作用とそれを打ち消す抑制性の作用が関与と予測
じんましんで観察される膨疹は、じんましんの病型によらず、皮膚マスト細胞から放出されるヒスタミンが血管に作用することで形成される。しかし、それだけでは病型あるいは個々の患者ごとに固有の形や大きさの膨疹の形成機序を十分に説明することは出来ない。一方、数式を用いた反応拡散モデルは、すべての反応が一斉に起こるのではなく、どこか一部で起きた反応が次の反応を起こし、それが次々と拡散する仕組みを説明できる。同研究では、患部で観察された膨疹の形とその変化について、反応拡散モデルを用いて解析し、じんましんで見られる多様な形の膨疹を再現することに成功した。また、そのモデルから、膨疹の形成には従来考えられてきたヒスタミンの作用(正の作用)とそれを打ち消す抑制性の作用(負の作用)が関与することが予測されたという。
今後、生物学的な実験手法によりその抑制系の機序と分子が同定されることで、じんましんの病態の理解を深め、形態解析によるじんましんの新しい病型分類や適切な治療の選択ができるようになることが期待される。また、じんましん以外の特徴的な形の発疹が現れる皮膚疾患についても、数理モデルによる数学的解析を通じて病態の理解や治療の有効性を予測する新しい分野が開ける可能性もあると、研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果