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RAやOAで、免疫細胞だけでなく軟骨細胞も関節の炎症を誘導することを発見-北大

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2020年01月20日 AM11:15

非免疫細胞に存在する炎症機構「炎症アンプ」、RAやOAでは?

北海道大学は1月15日、)、(OA)の軟骨細胞において炎症アンプが活性化していることを見出し、さらに炎症アンプ関連遺伝子のうちTMEM147(Transmembrane protein 147)が軟骨細胞に発現してNF-κB経路を正に制御していることを初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Arthritis & Rheumatology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

研究グループはこれまでに、慢性炎症を引き起こす鍵となる分子メカニズムとして、炎症アンプを報告した。炎症アンプは、線維芽細胞や血管内皮細胞などの非免疫細胞に存在し、NF-κB経路とSTAT3経路の同時活性化によって種々の炎症性サイトカインやケモカイン、増殖因子などを大量に持続的に産生する機構。炎症アンプが局所で活性化すると免疫細胞の浸潤が引き起こされ、恒常性の破綻から慢性炎症が引き起こされる。

これまで関節リウマチや変形性関節症の病態に大きく関わるのは滑膜細胞であると考えられ、多くの治療薬が開発されてきたが、依然として難治例は存在している。そこで研究グループは、今回、RAなどの関節炎で炎症の結果傷害されると考えられてきた軟骨細胞に着目し、軟骨細胞に炎症アンプが存在するかどうかを明らかにするとともに、炎症アンプ関連遺伝子の1つであるTMEM147の機能を精査した。

軟骨細胞の炎症アンプが RA、OA の病態に関与

研究グループは、RAモデルマウスおよびRA患者、さらに、OAモデルマウスおよびOA患者から軟骨組織を採取し、免疫組織染色を行って評価した。また、軟骨細胞における炎症アンプの存在やTMEM147の機能を、定量的PCR法、RNA干渉法、免疫沈降法、ウェスタンブロット法などを用いて検討した。さらに抗TMEM147抗体を作成し、関節炎モデルマウスに対する治療効果を検討した。

解析の結果、まず軟骨細胞は、NF-κB経路とSTAT3経路の同時活性化によって炎症性サイトカインIL-6やケモカインを大量に発現し、炎症アンプの機構が存在することが明らかになった。さらに、RAモデルマウスおよびRA、OA患者の軟骨組織において、炎症アンプの活性化の指標であるNF-κBとSTAT3の活性化が認められた。一方、軟骨細胞特異的な炎症アンプの抑制によりRAモデルマウスの関節炎が抑制されたことから,軟骨細胞の炎症アンプが RA、OA の病態に関わることが示唆された。

TMEM147がNF-κB 経路を正に制御、抗TMEM147抗体にRA治療効果の可能性

また、TMEM147は、RA モデルマウスおよびRA患者のサンプルを用いた検討から、関節の軟骨組織に強く発現していることが明らかになった。軟骨細胞株において、TMEM147を過剰発現させると炎症アンプの活性化が増強され、反対に、TMEM147遺伝子をRNA干渉法により抑制する、もしくは、抗TMEM147抗体を添加することによって炎症アンプの活性化が抑制されることが示された。さらに、生体内においても、抗TMEM147抗体の投与により RA モデルマウスの関節炎が有意に抑制された。TMEM147が作用する分子メカニズムとしては、同研究グループが2017年に報告した、NF-κB活性化の新規経路における足場タンパク質として機能していることが示唆された。

研究グループは、今回の研究成果について、「関節炎症における軟骨細胞の重要性やRA、OA病態のさらなる理解をもたらし、新規治療法開発の一助になるものと期待される」と、述べている。

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