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がんの破骨細胞誘導に関わる新規メカニズム発見、抑制に有効な薬物も確認-東京医歯大

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2020年01月16日 AM11:30

現状広く用いられるRANKL阻害による治療は、顎骨壊死などの副作用

東京医科歯科大学は1月15日、破骨細胞分化に関して新たなメカニズムをつきとめたこと、また、それはカンナビノイドの一種「」という薬物によって阻害できることを明らかにしたと発表した。これは、同大大学院医歯学総合研究科口腔病理学分野の池田通教授と土谷麻衣子大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Molecular Sciences」に掲載されている。


画像はリリースより

破骨細胞は骨を吸収する細胞で、骨を形成する骨芽細胞と連携して骨の代謝バランスを保ち、骨の健康を維持する役割を担っている。このバランスが吸収優位になると過剰な骨吸収が起こり骨粗鬆症の原因に。一方、形成優位になると、骨の異常な硬化を伴う疾患の原因となる。

破骨細胞の誘導は、体内の白血球の一種であるマクロファージが破骨細胞誘導因子RANKLの刺激を受け、その情報が細胞の核内に伝わり、破骨細胞誘導のマスター転写因子NFATc1の発現を上昇させることに起因することが知られている。このことから、」(ヒト型RANKL中和抗体)が、がんの骨転移や骨粗鬆症に対して広く使われている。しかし、RANKLを阻害する治療法には副作用がある。特に骨吸収抑制薬関連顎骨壊死と呼ばれる副作用は高齢者で増え続けているうえ、がんの骨転移に対する治療を受けた患者にも生じやすい。これらの課題を克服する新たな薬の開発を目指し、研究が行われた。

海外で臨床応用される「カンナビジオール」は破骨細胞誘導をほぼ完全に阻害

研究グループは以前に、マクロファージではなく、RANKLの弱い刺激によって破骨細胞への分化が運命づけられた破骨細胞前駆細胞にがん細胞が作用することで、今まで知られていない機構により破骨細胞誘導が起こっている可能性があること、破骨細胞前駆細胞からの口腔扁平上皮がんによる破骨細胞誘導にはRANKL阻害が無効であることをつきとめている。その結果を踏まえ、破骨細胞前駆細胞から破骨細胞を誘導できる口腔扁平上皮がん細胞3Aと、破骨細胞を誘導できない口腔扁平上皮がん細胞 HO-1-N1 から分泌された細胞外小胞をそれぞれ採取して検証を行った。結果、破骨細胞を誘導できる3A細胞の細胞外小胞には破骨細胞誘導能があり、破骨細胞を誘導できない HO-1-N1の細胞外小胞には破骨細胞誘導能がないことを見出した 。

続いて、このがん細胞の細胞外小胞による破骨細胞誘導にデノスマブが無効であることを確認。細胞外小胞による破骨細胞誘導を阻害する目的で、細胞外小胞分泌阻害作用があると報告されている複数の薬物を用いて破骨細胞誘導への影響を調べたところ、「カンナビジオール」によって、デノスマブが無効の破骨細胞誘導がほぼ完全に阻害されることを見出した。カンナビジオールは、主に神経系の疾患に対する治療薬として海外で臨床応用されている。

さらに、カンナビジオールの添加により口腔扁平上皮がん細胞からの細胞外小胞の分泌は全く阻害されないことを確認。3A細胞の培養上清から細胞外小胞を除去しても破骨細胞誘導能が完全にはなくならなかったことから、口腔扁平上皮がんによる破骨細胞前駆細胞からの破骨細胞誘導には、がん細胞の細胞外小胞のみならず、他のがん細胞由来因子も関与する可能性が示唆された。

これまで破骨細胞誘導は、マクロファージにRANKLが作用することでNFATc1の発現上昇を来して起こることが唯一のルートと考えられてきたが、今回の研究成果は、破骨細胞誘導にRANKLが不可欠であるのは、マクロファージから破骨細胞への分化が運命づけられた破骨細胞前駆細胞を誘導する初期段階のみであり、破骨細胞前駆細胞をスタートとすれば、今まで知られていなかった破骨細胞誘導の経路があることを示している。「今後、がんによる骨破壊のみを阻害する画期的な治療薬が開発されることが期待される」と、研究グループは述べている。

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