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肌セラミド量を増加させる化粧品素材「ギンナリンB」の開発に成功-富山大

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2020年01月15日 PM12:30

困難とされていた「合成カエデタンニン」の大量生産に成功

富山大学は1月7日、セラミド合成酵素(CERS3)の亢進とセラミド分解酵素(CDase)阻害のデュアルアクションにより、肌セラミド量を増加させる革新的な化粧品素材の開発に成功したと発表した。この研究は、同大附属病院薬剤部の加藤 敦准教授が、株式会社伏見製薬所および公益財団法人かがわ産業支援財団と共同で行ったもの。研究成果は「Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters」に掲載されている。


画像はリリースより

正常な肌表皮は、体内からの過度な水分蒸散の防止や、外界からの刺激の侵入を防ぐバリアとして、重要な役割を担っている。一方、セラミドは親水基と疎水基を持ち、角質細胞間で脂質二重層構造を形成することにより水分を挟み込み、水層と脂質層が交互に重なったラメラ構造となっている。これにより水分が保持され、角質細胞間の隙間を埋めることで、角質細胞が容易に剥離しないようになっている。

現在、化粧品市場には肌のセラミドを補う目的で、植物セラミドや合成セラミドなどの疑似セラミドを皮膚に塗布する化粧品が多く見られる。これらは一時的に肌のセラミドを補うことはできるものの、肌本来のセラミド産生機能を向上させるものではない。そのため、化粧品業界では以前より、疑似セラミドやセラミド原料を皮膚や経口から摂取するのではなく、肌のセラミド産生機能に働きかけることでヒト本来の健康な肌を実現させる「肌の内側から体内美容成分を増やす化粧品原料」が求められてきた。

研究グループは今回、加齢に伴い低下する肌セラミド量や代謝機能、不足した成分を外から補うのではなく、肌本来の機能を回復させ、「肌の内側から体内美容成分を増やす化粧品」をコンセプトとした機能性化粧品素材を模索。サトウカエデやアメリカハナノキなどメープルシロップを産生するカエデ科植物の原木に含まれる希少な天然物であるginnalin Bに着目し、研究を行った。

保湿性に優れるだけでなく、表皮細胞の分化促進作用も

ginnalin Bは、希少糖である1,5-アンヒドログルシトール (1,5-AG)のC6位の水酸基に没食子酸が結合したカエデタンニンの一種。これまで、植物中に含まれる糖質やポリフェノール類、着色成分などとの分離が困難なことから、化粧品素材として使用されていなかった。研究グループは今回、経済産業省の補助事業である戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の採択を受け、この「合成カエデタンニン」の生産技術開発に着手し、低コストかつ大量生産に成功した。ginnalin Bの特徴は以下の通り。

(1)正常ヒト表皮ケラチノサイト(PHK16-0b)を50 µM ginnalin B添加培地で48時間培養し、セラミド合成酵素遺伝子(CERS3)に対する発現解析を行ったところ、ginnalin B無添加での培養時と比べ、セラミド合成酵素遺伝子の有意な発現上昇が確認された。さらに、50-100 µM ginnalin B存在下で48時間培養したPHK16-0b細胞では、ginnalin B無添加で培養した場合に比べ、細胞内セラミドの産生量が濃度依存的に増加した。

(2)正常ヒト表皮ケラチノサイト(PHK16-0b)に、各濃度のginnalin Bを添加し、48時間または72時間培養し、分化関連遺伝子に対する発現解析を行ったところ、ginnalin B無添加での培養時と比べ、ケラチノサイトの初期分化マーカーであるケラチン10、ケラチン1および後期分化マーカーであるフィラグリン遺伝子の有意な発現上昇が確認された。

(3)ヒト皮膚三次元モデル(EpiDerm Skin® Model EPI-212)を100 µM 添加培地で7日間培養し、分化関連タンパク質(ケラチン10、フィラグリン)の免疫染色を行ったところ、ginnalin B無添加での培養時と比べ、ケラチン10、フィラグリンの染色が増加し、分化関連タンパク質の産生量の増加が確認された。

今回の研究成果により、セラミド合成酵素(CERS3)の亢進とセラミド分解酵素(CDase)阻害のデュアルアクションによって、肌セラミド量を増加させる革新的な化粧品素材の開発に成功した。同素材は、保湿性に優れるとともに、表皮細胞の分化促進作用(肌ターンオーバー促進作用)も有することから、今後、幅広い化粧品への配合が期待される。

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