医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 統合失調症のワーキングメモリー改善に経頭蓋直流刺激が有効であることを実証-NCNP

統合失調症のワーキングメモリー改善に経頭蓋直流刺激が有効であることを実証-NCNP

読了時間:約 1分27秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年01月08日 PM12:15

頭皮上に置いた電極間に微弱な電流を流すニューロモデュレーション

)は1月7日、(transcranial direct current stimulation:tDCS)が、統合失調症の認知機能、特にワーキングメモリーの改善に有効であることを、メタ解析法を用いて実証したと発表した。この研究は、NCNP精神保健研究所児童・予防精神医学研究部(予防部)住吉太幹部長および成田瑞(ジョンズ・ホプキンス大学医学部博士研究員および予防部研究生)らの研究グループによるもの。研究成果は、科学雑誌「Schizophrenia Research」に掲載されている。


画像はリリースより

統合失調症は、一般人口の約1%が罹患する原因不明の精神疾患。主な症状として陽性症状(幻覚、妄想など)、陰性症状(感情の平板化、引きこもりなど)、(記憶、注意、問題解決能力など)の障害などが挙げられる。特に認知機能障害は、患者の社会的転帰に重要であるとされている。

tDCSは、頭皮上に2つのスポンジ電極を置き、電極間に微弱な電流を流すニューロモデュレーションで、脳の神経活動を修飾する。これまで、比較的少数例を対象とした複数の臨床試験で、統合失調症の認知機能障害をtDCSが改善する可能性が示されてきた。しかし、複数の試験の結果を統合した検討は行われていなかった。

年齢などの因子にも影響されず、患者の社会復帰への貢献に期待

研究グループは今回、前頭部へのtDCSを複数回施行した無作為化比較試験を対象として複数の医療研究データベースから情報を取得。その中で対象となった9つの試験に対し、ランダム効果モデルを用いたメタ解析で、被験者268名に対する検討を行った。

その結果、認知機能の領域の中で、特にワーキングメモリーに対する有意な効果が示された。この効果は年齢などの因子に影響されず、また、出版バイアス(否定的な結果が出た研究は、肯定的な研究に比べて公表されにくいというバイアス)も認められなかったという。

今回の研究成果により、tDCSが統合失調症のワーキングメモリーに対して有効な治療法となり得ることが示された。これにより、tDCSが患者の社会復帰(復学、就労など)の転帰の改善のための有用な治療法となることが期待される。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大