胃をLCIで内視鏡検査、胃がん発症リスクが高い人をスクリーニング
京都府立医科大学は12月24日、レーザー光による画像強調内視鏡観察(Linked color imaging)が、ピロリ菌除菌後に発見される胃がんのリスク評価に有用であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科消化器内科学の間嶋淳研修員、土肥統助教、内藤裕二准教授、伊藤義人教授らの研究グループによるもの。研究成果は、科学雑誌「Gastrointestinal Endoscopy」に掲載されている。
現在、日本において胃がんは罹患数が2番目に多いがん。多くの胃がんの原因はピロリ菌であり、胃がん予防のためにピロリ菌の除菌が有効であることがわかっている。しかし、ピロリ除菌後にも胃がんが発症すること(除菌後胃がん)がしばしばあり、除菌後胃がんによる死亡を減少させるためには、そういった胃がんの発症リスクが高い人を明らかにする必要がある。
近年、内視鏡検査で胃粘膜の状態を評価すること(内視鏡所見)で胃がんのリスクを判定する方法が注目を集めている。内視鏡機器の技術革新はめざましく、より正確に消化管のがんを発見し診断することなどを目的として、さまざまな特殊光による観察(画像強調観察)が開発されている。2012年には富士フイルム株式会社がレーザー光源を用いた内視鏡システムを開発し、画像強調観察であるLinked color imaging (以下、LCI)モードが日常臨床に応用されるようになった。研究グループはこれまでに、通常観察と比較して、LCIを用いることによりピロリ菌感染を示唆する内視鏡所見を認識しやすくなることを報告している。しかし、この新しい画像強調観察であるLCIを用いた内視鏡所見によるピロリ除菌後の胃がんリスク評価についてはあまり報告がないのが現状だ。
画像はリリースより
除菌後に「地図状発赤」が見つかると胃がんリスクは3.6倍
今回の研究では、ピロリ除菌後に京都府立医科大学附属病院で胃がんスクリーニングのために胃カメラを受けた患者を対象に、除菌後胃がんが見つかった症例(109人)と除菌後胃がんがない症例(85人)の内視鏡所見の違いについて比較。除菌後胃がんが見つかった症例に多く見られる内視鏡所見を解析、ピロリ除菌後に胃がんが発症するリスクを判定した。
結果、除菌後胃がんが見つかった症例では、有意に「地図状発赤」という所見がみられた。逆に除菌後胃がんがない症例では、有意に「regular arrangement of collecting venules(RAC)」という所見がみられるというものだった。「地図状発赤」がある症例は、「地図状発赤」がない症例に比べて、3.6 倍も除菌後胃がんが見つかることも明らかになった。さらに「地図状発赤」は、通常のモード(白色光、white light imaging; WLI)を使って観察するよりも LCI を用いる方がより正確に評価ができるとわかった。
これまでもピロリ除菌後の胃がんのリスクとなる内視鏡所見の報告はあったが、今回新たに地図状発赤がリスクであることがわかった。さらに地図状発赤についてはLCIを用いる方が見やすく、これまで通りの観察では胃がんのリスクを過少評価してしまう可能性が示唆された。「本研究成果により、LCI を用いた胃がんリスクの正確な評価が日本だけでなく世界に広がり、最終的にそのことがより多くの胃がんの早期発見・治療につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・京都府立医科大学 新着ニュース