子宮腺筋症患者で高頻度に子宮内膜症を併発する理由を解明
国立がん研究センターは12月19日、子宮腺筋症のゲノム解析と患者の臨床情報との統合的解析を行い、子宮腺筋症がゲノム異常を伴う多クローン性増殖疾患であることを突き止めると共に、高頻度に子宮内膜症を併発する原因を明らかにしたと発表した。この研究は、同センターと、東京大学、順天堂大学、がん研究会との共同研究によるもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載されている。
画像はリリースより
子宮腺筋症は、女性の20~30%が罹患し、高頻度に子宮内膜症を併発。激しい月経痛や貧血のほか不妊の原因にもなっている。ホルモン療法などによる治療効果が低い場合は、子宮を摘出することもある。子宮腺筋症は子宮内膜様組織が子宮筋層で増殖するが、かつては子宮内膜様組織が卵巣や別の臓器で増殖する子宮内膜症と同一疾患として考えられていた。しかし、臨床上の特徴が異なる点も多く、現在は別の疾患として考えられている。近年のゲノム解析により、子宮内膜症については、がん関連遺伝子である「KRAS」に変異が入った細胞が子宮の内膜に存在することが、その起源であることが明らかになった。一方、子宮腺筋症の解析は進んでおらず、発症機構やなぜ子宮腺筋症で子宮内膜症を高頻度に併発するのかは不明のままだ。
KRAS変異陽性の子宮腺筋症患者は26症例中22症例
研究グループは、東京大学と順天堂大学の附属病院で手術を受けた子宮腺筋症患者の病変組織、病理学的に正常な子宮内膜組織、併発子宮内膜症の病変組織のゲノム解析を実施。すると、子宮腺筋症の病変部(子宮筋層に存在する子宮内膜様組織)において、KRASの変異を約40%に認めた。また、同一のKRASの変異は、子宮腺筋症のない患者の見かけ正常な子宮内膜組織や、併発した子宮内膜症の病変部においても認められた。これにより、子宮腺筋症と子宮内膜症の病気の起源となる細胞は、子宮内膜組織で発生したKRAS変異細胞であることが明らかになった。
また、子宮内膜症のゲノム解析から、KRASやPIC3CA遺伝子変異が、病変部だけではなく、子宮内膜組織においても確認された。子宮腺筋症者でも、KRAS遺伝子変異が、子宮筋層中の病変部では70症例中26症例、子宮内膜組織では18症例中10症例で認められた。
さらに、子宮腺筋症のKRAS遺伝子の変異を有する患者群について臨床情報との相関性を調べたところ、子宮内膜症の併発率が高いことが示された。KRAS遺伝子の変異を有する26症例中22症例(84.6%)が子宮内膜症を併発。両疾患が高頻度に併発する機構の一部が明らかとなった。
▼関連リンク
・国立がん研究センター プレスリリース