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AEDによる心肺蘇生、除細動不成功の場合も脳障害を改善させる可能性-国循

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2019年12月20日 PM12:30

AEDによるCPR施行患者とAEDを用いないCPR施行患者の予後を比較

国立循環器病研究センターは12月18日、院外心停止患者に対する市民による自動体外式除細動器()を用いた除細動実施が、その時点で自己心拍再開へと至らなかったとしても、その後の神経学的転帰を改善させる可能性を世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同センターの中島啓裕心臓血管系集中治療科医師、田原良雄心臓血管系集中治療科医長、野口輝夫心臓血管内科部長、西村邦宏予防医学・疫学情報部長、安田聡副院長らの研究グループによるもの。研究成果は、「The LANCET」に掲載されている。


画像はリリースより

院外心停止は公衆衛生上の重要な問題であり、日本では年間約11万件発症している。蘇生科学の発達にも関わらず、社会復帰率は約7%前後と極めて低く、社会復帰率改善は先進諸国の喫緊の課題だ。

近年、市民によるAEDを用いた除細動実施が心室細動の院外心停止患者の蘇生率向上において有効である可能性が報告されているが、市民による目撃があり、かつ応急処置がなされた心停止患者でさえもAEDによる除細動実施率は10%程度と低く、さらに救急隊現着前に自己心拍再開を認める症例はそのうち18%程度。つまり、市民がAEDによる除細動を実施した症例の約80%は救急隊が現着した時点では心停止が持続していることになる。AEDを探して持ち運ぶ時間や、その間に心肺蘇生(CPR)が中断される可能性、救急通報が遅れる可能性を考慮すると、AEDで除細動を実施したにも関わらず救急隊現着までに自己心拍再開を得られなかったような症例の予後は、AEDを使用せずにCPRのみを継続した症例と比較して予後不良である可能性が懸念される。

同研究では、総務省消防庁によるウツタイン様式救急蘇生統計データを用いて、救急隊現着時点で心室細動が持続していた患者において、事前に市民によってAEDを用いたCPRが施行された患者とAEDを用いないCPRが施行された患者の予後を比較した。

30日後の神経学的転帰良好な割合、CPR+AED併用群が有意に高値

2005~2015年の間に日本で発生した全129万9,784例の院外心停止患者から、市民による目撃がありCPRが施行された心室細動心停止患者2万8,019例のうち、最終的に救急隊現着時点で心停止が持続していた患者2万7,329人(CPR+AED併用群2,242例vs CPR単独群2万5,087例)を解析。その結果、30日後の神経学的転帰良好な割合は、CPR+AED併用群の方が、CPR単独群と比較して、有意に高値であることが示された(38%vs23%,調整後オッズ比1·45;95%CI,1·24-1·69,p<0·0001)。救急通報~救急隊現着までにかかった時間(中央値8分,四分位範囲6分-10分)ごとに解析しても同様の結果が得られたという。

今回の研究結果より、市民によるAEDを使用したCPRは、当初のAEDによる除細動実施で心拍再開を得られなかったとしても、神経学的予後を改善させる可能性が示された。この結果には、AEDのCPR音声ガイダンスの効果が寄与していた可能性があるという。同研究はAEDの新たな可能性を見出した研究であり、市民に対するAEDを用いたCPR教育活動を今後さらに推進するものだ。また、今回の結果は救急通報~救急隊現着までの時間に依存しないことから、日本全国どのような地域においても一般化されると考えられる、と研究グループは述べている。

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