従来の術式は、合併症などのリスクから症状が進行した患者に対してのみ推奨
大阪大学は12月16日、人工心肺を用いて心臓を一時的に停止させて行っていた僧帽弁形成術を、人工心肺を用いずに心臓拍動下で僧帽弁形成術を行い成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の澤芳樹教授(心臓血管外科)らのグループによるもの。人工心肺を使わない僧帽弁形成術の成功例は、国内初となる。
画像はリリースより
重度の僧帽弁閉鎖不全症は、放置すると心臓拡大、不整脈、心不全、肺うっ血などを来たすため、心臓手術(僧帽弁置換術、僧帽弁形成術)が必要となる。従来の心臓弁に対する手術は、人工心肺装置を用いたうえで、上行大動脈をクランプし、心筋保護液を注入することで心臓を停止させてから、心臓や大動脈を切開して行う。しかし、この術式では、脳梗塞などの合併症や、心停止に伴う一時的な心機能低下などの問題がある。そのため、重度の僧帽弁閉鎖不全症は放置すると心不全が進行するにもかかわらず、ある程度症状や心臓拡大が進行した患者に対してのみ僧帽弁手術が勧められている。
人工心肺の合併症を回避し、術後回復も通常の手術より早く
今回、研究グループは、新たな治療法として、高難度新規医療技術「NeoChordを使用したbeating mitral valve surgery」のもと、経心尖アプローチによる僧帽弁形成術を国内で初めて実施し、成功した。
同治療法は、人工心肺を使用しないため、人工心肺の合併症を回避することができる。また、術後の回復も通常の心臓手術より早く、手術のさらなる低侵襲化や安全性向上が期待される。今後、持病や既存の合併症により人工心肺を用いた心臓手術が困難な患者に対する治療法としても期待される、と研究グループは述べている。
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