種々のホルモンを合成・分泌する副腎でテロメア長に男女差はあるのか?
東京都健康長寿医療センターは12月11日、高齢期(65歳以上)の男性では生命維持に重要なホルモンを合成・分泌する副腎の重量が加齢に伴い減少し、高齢女性では変化しないことを明らかにし、染色体末端のテロメアが、高齢男性の副腎では高齢女性に比べて短いことも示したと発表した。この研究は、同センター研究所の老年病理学研究チーム高齢者がん研究グループが、東北大学、東京都保健医療公社豊島病院の研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、内分泌および代謝分野の国際医療機関ジャーナル「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に掲載されている。
画像はリリースより
国や人種に関係なく女性が男性よりも長命であることが知られているが、その背景にある細胞学的・分子生物学的なメカニズムは解明されていない。すべての細胞の染色体末端にはテロメアという構造が位置し、染色体を変性・消失などから保護している。このテロメアがある一定レベルより短くなると、細胞は壊れやすくなる。血液細胞のテロメア長は若い世代から女性の方が長いため、このテロメア長の差が男女の寿命差につながるという説がこれまで有力だった。しかし、高齢になると血液細胞テロメア長の男女差が小さくなるため、これだけでは説明できない。研究グループは、生命活動に重要な、さまざまなホルモンを合成・分泌する副腎のテロメア長の男女差に注目し研究してきた。特に、副腎の大半の体積を占める束状層という領域からは抗炎症作用・抗ストレス作用など生命活動に極めて重要なホルモンが合成・分泌されている。
高齢男性で副腎は軽くなりテロメアも短縮、男女の寿命差に関連の可能性
今回、研究グループは、乳児から超高齢者まで、病理解剖から得られたヒト副腎のテロメア長を解析し、その加齢性変化や男女差を調べた。その結果、65歳以上の高齢期では男性の副腎重量は減少する一方、高齢女性の副腎重量には変化がみられないことが判明。また、高齢期では女性に比べて男性の方が束状層のテロメアが短いことがわかった。
以上の結果から、高齢男性の副腎では束状層細胞のテロメア減少が細胞変性・脱落を引き起こし、副腎重量を減少させていることが考えられるという。研究グループは、「束状層細胞は生命活動に極めて重要なホルモンを分泌することから、高齢男性における束状層細胞の減少は、男女の寿命差に関係している可能性がある」と、述べている。
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・東京都健康長寿医療センター プレスリリース