スギ花粉症症状や軽度のアトピー性皮膚炎症状を軽減させる乳酸菌発酵果汁飲料
株式会社ヤクルト本社は12月11日、乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取が、スギ花粉症症状を軽減し、過剰なアレルギー反応を制御する細胞(制御性T細胞、以下Treg)の減少を抑制することを確認したと発表した。この研究は、同社と国立病院機構下志津病院の鈴木修一小児科医長が共同で行ったもの。研究成果は、「Allergy」に掲載されている。
画像はリリースより
近年、日本においてスギ花粉症などのアレルギー疾患に悩む人が増加しており、手軽に摂取できる抗アレルギー効果を有する食品への関心が高まっている。同社はこれまでに、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)の誘導能が高い乳酸菌として、「乳酸菌LP0132」を選出している。
また、これまでの研究から、柑橘類の果汁を乳酸菌LP0132により発酵させた乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取が、スギ花粉症症状を有する方の花粉飛散時期における症状やQOLの悪化を抑制すること、軽度のアトピー性皮膚炎患者の症状を軽減すること、軽度の通年性アレルギー性鼻炎患者の症状を軽減することなどを明らかにしてきた。しかし、どのようなメカニズムで症状が軽減するのかは不明だった。
1日1本8週間継続摂取後にアレルギー関連血液パラメーター測定
研究グループは今回、スギ花粉症症状を有する人を対象に、乳酸菌発酵果汁飲料の有効性を再度確認するとともに、アレルギー疾患に関連する血液パラメーターを測定し、その作用メカニズムを考察した。
まず、2017年のスギ花粉飛散時期(2~4月)に、花粉症自覚症状を有する100人(20~65歳の男女)を無作為に2群に分け、温州みかん果汁を乳酸菌LP0132で発酵させた乳酸菌発酵果汁飲料、または乳酸菌LP0132を含まない果汁飲料(プラセボ)を、1日1本、8週間継続摂取してもらい、花粉症症状に関するアンケート調査およびアレルギー関連の血液パラメーターの測定を行った。
被験者の花粉症症状については、「日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(JRQLQ No.1)」の項目で評価した。JRQLQ No.1は、目および鼻の症状6項目(鼻水、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目)から成っている。鼻水、くしゃみについては1日の回数のスコア(0:0回、1:1~5回、2:6~10回、3:11~20回、4:21回以上)、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみおよび涙目についてはスコア(0:なし、1:ほとんどなし、2:ときどき、3:かなり強い、4:1日中あり)をアンケートに記入してもらった。総合症状スコアは6項目の平均スコア、総合鼻症状スコアは鼻水、くしゃみ、鼻づまりの合計スコアで評価した。また、摂取前、摂取期間中、摂取後に採血し、アレルギー関連の血液パラメーターを測定した。
乳酸菌飲料を摂取しTregが増加した被験者群では、鼻症状も軽減
その結果、乳酸菌発酵果汁飲料群では、摂取1、2週目の総合症状スコアの変化量(⊿総合症状スコア)および総合鼻症状スコアの変化量(⊿総合鼻症状スコア)がプラセボ群と比較して有意に低値を示し、摂取期間全体を通しても、⊿総合鼻症状スコアは有意に低値を、⊿総合症状スコアは低値傾向を示した。これらの結果は、以前の研究で認められた乳酸菌LP0132のスギ花粉症症状の軽減効果を支持するものと考えられる。一方、プラセボ群でのみ、花粉飛散時(摂取期間中)に摂取前と比較してTregが有意に減少した。乳酸菌発酵果汁飲料群ではプラセボ群に比べ、摂取期間中にTregが有意に高値を示し、Tregの減少が抑制された。同結果は、プラセボ群で認められた花粉飛散に伴うTregの減少が、乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取により抑制されたことを示唆するものと考えられる。
また、乳酸菌発酵果汁飲料群の被験者50人を、摂取前に比べて摂取期間中にTregが増加した被験者17人と減少した被験者33人に分け、症状スコアの変化量を比較。その結果、Tregが増加した被験者群では、減少した被験者群に比べて⊿総合鼻症状スコアが有意に低値を示し、鼻症状の軽減が示唆された。一方、プラセボ群でも同様の解析を実施したが、これらの現象は認められなかった。
今回の研究成果により、乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取が花粉飛散に伴う症状を軽減すること、また、同効果にはTregの変化が関与することが示唆された。研究グループは、「今後、さらに詳細なメカニズムの解明を進めていく。抗アレルギー効果を有する乳酸菌やそれらを利用した食品へのニーズは非常に高まっている。今後、乳酸菌LP0132を含む乳酸菌発酵果汁飲料が、これらのニーズに応え、健康の維持・増進に役立てられると期待される」と、述べている。
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