視神経や脊髄の炎症を繰り返す難病「視神経脊髄炎」の再発発生パターンを解析
東北大学は12月9日、視神経脊髄炎患者における再発の発生パターンを解析し、視神経脊髄炎での発作が短期間に集中して起きる群発期と、それ以外の発作間欠期に分かれることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科、同大病院、東北医科薬科大学医学部、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の研究グループによるもの。研究成果は米国神経学会の公式オープンアクセス学術誌「Neurology Neuroimmunology & Neuroinflammation」に掲載されている。
画像はリリースより
国の指定難病である視神経脊髄炎は、血清中に抗アクアポリン4抗体が出現することが特徴的な自己免疫関連の中枢神経疾患。以前は視神経脊髄型多発性硬化症と呼ばれ、視神経や脊髄の炎症を繰り返すことが知られている。視神経脊髄炎における神経障害度は、再発が起こることで段階的に進行し、また、再発の結果、神経障害が重篤になりやすいため、いかに再発を有効に予防できるかが重要となる。
日本では再発予防薬として、長期間の少量経口ステロイドによる治療や、その他の免疫抑制薬が用いられてきた。今後はさらに、より高い治療効果が期待できる分子標的治療薬の使用頻度も増すことが予想され、それらの予防薬をどのように使い分けるのか、医学的証拠の確立が求められている。
間欠期を挟むと、再発時の発作の種類が、前回の発作とは無関係にランダムに生じることも判明
研究グループは、抗アクアポリン4抗体が陽性の視神経脊髄炎患者を10年間にわたり追跡調査したデータを解析し、視神経脊髄炎における再発の時間的パターンおよび発作種類の出現パターンの特徴を調査した。その結果、再発の多くは前回の発作から12か月以内に集中して繰り返し起きており、視神経脊髄炎の臨床経過が再発の集中する「群発期」と、それ以外の「間欠期」に分けられることがわかった。また、前回の発作からの再発がない期間が長くなるほど再発リスクが低下する傾向が示された。
さらに、群発期と間欠期における発作の種類(視神経炎、脊髄炎、脳病変)の解析を行ったところ、群発期には同じ種類の発作を繰り返す傾向が強かった一方で、一度間欠期を挟むと、次回の再発の発作の種類が、前回の発作の種類とは無関係にランダムに生じることもわかった。
今回の研究成果は、視神経脊髄炎患者の再発予防のための治療方針を考える上で、それぞれの患者が現在、群発期にあるのか、間欠期にあるのかを考慮して治療薬を選択することの有用性を示唆している。また、視神経脊髄炎における臨床研究において、患者を研究に含める際に、群発期にあるかどうかを考慮に入れる重要性も示唆している。今後、群発期と間欠期における患者データを比較することで、視神経脊髄炎の病態機序のさらなる解明が期待される。研究グループは、「群発期間中は期間をしぼってより強力で高価な再発予防薬を選択し、間欠期に入ったと判断され次第、より副作用の少ない治療薬に変更するというような治療方針の可能性も示唆され、今後の臨床現場への貢献も期待される」と、述べている。
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