岡村直樹副社長は同日、都内で記者会見し、「遺伝子治療分野のリーティングポジション確立に向けた重要なステップと位置づけている」と買収の意義を語った。
オーデンテスは、従業員270人のバイオ企業で、2012年に設立されている。X染色体連鎖性ミオチュブラー・ミオパチー(XLMTM)治療薬「AT132」が第I/II相段階にあり、20年中頃の米国申請、後半の欧州申請を予定しているほか、五つの遺伝子治療薬で前臨床試験を実施している。また、サンフランシスコに二つの製造施設を有し、「AT132」を商業生産できる能力を保有している。
アステラスは遺伝子治療薬の事業基盤を獲得する。岡村氏は「遺伝子治療薬の大量生産がわれわれにとって難しい課題だった」と課題を指摘。製造体制を獲得することで、遺伝子治療領域での競争力強化を図る。オーデンテスはAAV遺伝子治療薬に特化した1000Lの細胞培養槽を持っており、8000Lまで製造能力を増強できるという。
将来的には、アステラスの基盤技術と融合を図り、様々な疾患領域で新薬を創出したい考えだ。オーデンテスは、特定遺伝子の欠損を標的とした希少神経筋疾患の遺伝子治療薬を開発している。アステラスが保有する分子生物学的な知見や創薬に適用可能な技術を組み合わせることで、「患者数の多い一般的な疾患に拡大させ、遺伝子治療の技術を応用してアンメットメディカルニーズを解決したい」と展望を語った。
アステラスは、2018~20年度の中期経営計画で、疾患領域にとらわれずに新規技術や治療手段などを多面的に考慮し、「癌免疫」「ミトコンドリアバイオロジー」「再生と視力の維持・回復」「ASIMバイオロジー」の四つを重点研究開発戦略領域に位置づけてきた。
最近は、再生医療領域などで数百億円規模の買収を行ってきており、今年7月の取締役会で遺伝子治療を第5の領域に位置づけ、当初はオーデンテスとのライセンス契約を視野に交渉を行ってきたが、巨額買収に踏み切った。今後、新たな成長領域へと進化させる方針である。