加熱処理後の小豆や廃棄される煮汁の成分や機能性を評価
三重大学は11月28日、小豆に含まれる糖代謝酵素阻害作用を示す成分を複数同定し、そのうちの1つが新規成分であることを発表した。これは同大生物資源学研究科栄養化学研究室の梅川逸人教授、西尾昌洋准教授、栗谷健志助教と、井村屋株式会社の共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Food Science」に掲載されている。
画像はリリースより
小豆は、ポリフェノールが豊富で、抗がん・抗アレルギーなどさまざまな作用があることが知られている。血糖値の上昇を抑える作用もあり、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の発症予防につながるため、小豆を用いた血糖値の上昇を穏やかにする食品の開発が望まれている。その一方、小豆を製品として加工する際にできる大量の煮汁は廃棄物として扱われており、その有効活用方法が求められていた。そこで研究グループは、小豆抽出物とその加熱物に着目し、成分分析と機能性を評価する研究を行った。
糖代謝酵素阻害成分「カテキン-7-O-β-D-グルコピラノシド (C7G)」を新発見、カテキンと同程度の効果
研究グループは始めに、小豆を一晩室温下で水に浸漬して成分を抽出(浸漬水)し、その浸漬水を加熱。加熱前と比較して加熱後に変化した成分を高速液体クロマトグラフィーで分画し、得られた各成分の構造を NMR(核磁気共鳴装置)を用いて決定した。次に、各成分による糖代謝酵素「α-アミラーゼ」、および「α-グルコシダーゼ」に対する阻害効果を検討した。その結果、小豆に含まれる糖代謝酵素阻害成分を複数特定し、「α-アミラーゼ」、および「α-グルコシダーゼ」に対する阻害効果を確認した。さらに、そのうちのひとつが新規成分「カテキン-7-O-β-D-グルコピラノシド (C7G)」であることがわかった。この新規成分は、すでに糖代謝酵素阻害活性が知られているカテキンと同程度の効果を有している。
また、この研究が小豆加工食品への応用を想定したものであることから、加熱調理前後の機能成分を検討したところ、加熱後でもこれらの糖代謝酵素阻害活性は減少するものではなく、むしろ増加したことが確認された。加熱を行うことで生じる煮汁を取り込ませた「煮小豆」(井村屋製)の中にも、これらの有効成分が存在していることが確認されたという。
今回同定された成分は、「煮小豆」のような加工後の小豆にも含まれている可能性があり、食事に加えることで、食後血糖値上昇を抑制する可能性を示唆、健康増進効果が期待できる。研究グループは、「今後はこれらの有効成分の生体内での効果を検討する予定」と、述べている。
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