カニ、エビなど甲殻類や鮭に蓄積されている橙赤色の色素「アスタキサンチン」
大阪市立大学は12月4日、抗酸化物質でカニ、エビなどの甲殻類や鮭に含まれるアスタキサンチンがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の肺気腫の予防に効果的であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 呼吸器内科学の久保寛明大学院生、浅井一久准教授、川口知哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌「Marine drugs」に掲載されている。
画像はリリースより
タバコ煙には活性酸素種などの有害物質が多く含まれており、活性酸素種の過剰による酸化ストレスは、COPDの病態において重要な役割を果たしている。一方、生体内ではNrf2 (Nuclear factorerythroid 2-related factor 2)という転写因子を活性化させることにより、酸化ストレスに対する防御メカニズムを発動することが知られている。
アスタキサンチンは、カニ、エビなど甲殻類や鮭に蓄積されている橙赤色の色素で、リコピンやβ-カロテンと同じカロテノイドの1種。抗酸化力はビタミンCの約6,000倍、コエンザイムQ10の約800倍とも言われる強力な抗酸化物質であり、最近の研究ではアスタキサンチンがNrf2を介し、酸化ストレスから生体を保護することが解明されている。
アスタキサンチンを投与したマウスでHO-1が増加、炎症細胞数が減少
研究グループは、これらの報告をもとに、アスタキサンチンが肺でのNrf2発現を高めて酸化ストレスを低減させ、タバコ煙による肺気腫を改善するとの仮説を立て、検証を行った。
まず、マウスに12週間の喫煙曝露を行い、餌へのアスタキサンチン添加の有無がCOPD 病態へ及ぼす影響を検討した。その結果、アスタキサンチン投与群では、肺組織において、Nrf2と抗酸化タンパク質であるHO-1(Heme oxygenase-1)の発現が有意に増加しており、BALF(気管支肺胞洗浄液)中の炎症細胞数(マクロファージおよび好中球)が有意に減少し、肺気腫の程度を示すMLI(平均肺胞径:mean linear intercept)や肺胞の破壊の程度を示すDestructive indexの上昇を抑制していることがわかった。
今回の研究は、アスタキサンチンの抗酸化作用が肺気腫予防効果を発揮することを実験的に明らかにしたもの。これは、今後のCOPD予防や治療確立に向けて重要な知見と言える。研究グループは、「現在のCOPD治療は、気管支拡張薬等を用いた対症治療にとどまっている。肺気腫の予防・改善といった根本的治療法の確立に向けて、引き続き「抗酸化治療」の研究を進めていきたい」と、述べている。
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