同院は2017年4月以降、薬剤師が働きやすい環境を作るため、育児中の女性には負担が小さい調剤などの中央業務を担当してもらい、同じフロアにいる薬剤部長やDI担当薬剤師らが、育児に伴う急な休暇や育休明け後の時短勤務によるマンパワー不足を補う体制を構築した。
ただ、薬剤部員の急な退職や病気療養が重なった結果、支援体制は限界に達し、急場を凌ぐ一時的な策として「応援薬剤師制度」を試行した。
薬剤部の川那邊佐和子氏は、「雇用枠はいっぱいで新たに常勤薬剤師を雇うことができず、派遣薬剤師を活用する場合には費用が高くつく。非薬剤師の活用を検討する時間的な余裕もなかったため、免許を持つものの働いていない薬剤師を地域で掘り起こしたいと考え、応援薬剤師制度の構築に取り組んだ」と振り返る。
1枠を2~3時間とし、今年2~3月の期間中にマンパワーが不足する時間帯を計20枠抽出して、港北区薬剤師会の所属薬局にFAXで応援を依頼。普段は薬局で働いている薬剤師7人に対して、薬局勤務の非番時に病院に来てもらい、20枠の業務を担当してもらった。
業務内容の中心はピッキングで、最終的な鑑査は院内の薬剤師が行った。非常勤として必要な契約を交わし、対価として平均的な薬剤師の時給を支払った。その結果、薬剤部にとっては一時的なマンパワー不足を補うことができ、薬局薬剤師からも「経験のない病院薬剤部の様子を見ることができ、良い経験になった」「初めて見る薬がたくさんあり、勉強になった」など評価する声があった。
川那邊氏は、「今回の方法は期間限定で取り組んだが、長期的な制度にする上では雇用の仕組みなど様々な課題もあり、ベストではないと思う。一つのモデルとして、他の地域でも様々な検討が進むことを期待したい」と話す。
薬局薬剤師が病院の業務を知ることは相互理解や連携の推進に役立つとして「今後は地域の薬局薬剤師が病院で研修を受ける仕組みの構築を検討していきたい」としている。