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皮膚炎など慢性的なかゆみを起こす脊髄のメカニズムを発見-九大

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2019年12月02日 AM11:45

慢性的にかゆく、過剰に引っかくことを抑制するために

九州大学は11月28日、皮膚からのかゆみ信号が脊髄で強まってしまうメカニズムを発見したと発表した。これは、同大大学院薬学研究院ライフイノベーション分野の津田誠教授、古賀啓祐特任助教、薬学府修士課程2年の山方涼大学院生らの研究グループによるもの。本研究成果は、米国科学誌「Journal of Allergyand Clinical Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより

かゆみは、「かきたい」という欲望を起こさせる不快な感覚。皮膚の異物(ダニなど)を引っかくことで除去する自己防衛反応と考えられている。通常、皮膚の中のかゆみを起こす物質は、まず、皮膚と脊髄をつなぐ神経(一次求心性神経)に作用し、かゆみ信号を発生させる。そのかゆみ信号は、脊髄の中にある次の神経に伝わり、この神経は「ガストリン放出ペプチド」()という物質を出す。GRPは次の神経にあるGRPの受容体(GRPR)に結合し、この神経(GRPR神経)を興奮させる。その信号はさらに脳へと運ばれて、私たちは体のどこで「かゆみ」が起こっているかを知ることができる。

皮膚炎などで慢性的にかゆい状態では、過剰な引っかき行動を起こし、それが原因で皮膚炎が悪化、さらにかゆみが増すという悪循環に陥る。これは「かゆみと掻破(そうは)の悪循環」といわれ、かゆみを慢性化させる大きな原因と考えられている。しかし、どのようなメカニズムでかゆみが強まり、過剰に引っかいてしまうのかはよくわかっていない。

アストロサイトから放出される「」がGRPR神経に作用

研究グループは、慢性的なかゆみを発症する接触性皮膚炎モデルマウスを作製。ゲノム編集技術を使って「」と呼ばれるグリア細胞だけで「リポカリン2」を作れなくすると、かゆみ信号の強まりと過剰な引っかき行動、そして皮膚炎がすべて弱くなった。

皮膚炎など慢性的にかゆい状態では、脊髄後角でアストロサイトが活性化し、それが作り出す「リポカリン2」がGRPR神経に作用し、GRPの働きを強めてしまう。その結果、ちょっとした弱いかゆみ信号でもGRPR神経が興奮するため、かゆみが起りやすくなってしまう。アストロサイトは慢性的にリポカリン2を作り出すため、それが慢性的なかゆみとなると考えられるという。また、グリア細胞は、神経活動や神経疾患に積極的に関与することが近年次々と報告され、世界の注目を集めている。

この研究成果は、慢性的なかゆみのメカニズムの解明へ向けた大きな一歩となり、将来的にかゆみを鎮める治療薬の開発にも応用できることが期待される。研究グループは、「今後さらに研究を重ね、慢性的なかゆみの全容解明を目指していきたいと」と、述べている。

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