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肝硬変からの肝細胞がん、TFF1タンパク質に予防作用を発見-名大

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2019年11月27日 PM01:00

胃がんの発生を防ぐタンパク質「」に着目

名古屋大学は11月22日、細胞外分泌型タンパク質であるTrefoil Factor Family 1(TFF1)に肝細胞がんの発生を防ぐ作用があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科腫瘍外科学の梛野正人教授と落合洋介大学院生、同大医学部附属病院消化器外科一の山口淳平助教の研究グループによるもの。研究成果は、米国科学雑誌「Hepatology」オンライン速報版で掲載された。


画像はリリースより

肝細胞がんは慢性肝炎や肝硬変患者に発生する悪性腫瘍。慢性肝炎や肝硬変は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどの感染やアルコールの過剰摂取などにより起こるが、ウイルスやアルコールが関係しない場合でも病気が進行する、非アルコール性脂肪性肝疾患()もある。このような肝臓で肝細胞がんが発生すると、完治のためには手術による切除が必要となる。手術で肝臓を切除するためには肝臓の機能が良好である必要があるが、患者の肝臓は慢性肝炎や肝硬変などにより肝機能が悪いことが多く、手術が不可能となることも少なくない。そのため、慢性肝炎や肝硬変患者から肝細胞がんが発生することを予防する方法の開発が求められている。

研究グループは、今回、胃粘膜で産生されるタンパク質TFF1に着目。TFF1は胃がんの発生を防ぐといわれており、肝臓においても同様の作用を示す可能性を追求した。

TFF1タンパク質をがん細胞に投与でWnt経路を遮断

まず、研究グループは、肝細胞がんのがん細胞にTFF1を強制的に産生させる方法を検討。TFF1を産生するようになったがん細胞は分裂して増殖するスピードが弱まり、(細胞死)が頻繁に起こることが明らかとなった。このような変化が起こる理由を検討した結果、TFF1を産生するがん細胞では、β-catenin(βカテニン)の活性が減弱していることが判明したという。βカテニンは、肝細胞がんの発生に関与するとされる発がん因子であり、TFF1はβカテニンを抑制することで、がん細胞をアポトーシスさせることが明らかとなった。また、ヒトの肝細胞がんではTFF1が産生されないようにDNAの変性(メチル化)が起きていることも判明した。

次に、肝細胞がんが発生するKRAS遺伝子改変マウスモデル(KCマウス)を用いて検討したところ、KCマウスでは生後1年で小さな肝細胞がんが発生することが確認された。しかし、このマウスのTFF1遺伝子を取り除いた結果、生後6か月で同様の肝細胞がんが発生し、生後1年ではほぼ全例のマウスに巨大ながんが発生した。これらの結果より、TFF1には肝細胞がんの発生を予防する働きがあることが証明されたとしている。

また、TFF1をタンパク質としてがん細胞に投与することで、発がん経路であるWnt経路を遮断することが判明した。つまり、TFF1タンパク質を肝硬変患者に投与すれば肝細胞がんの発生を予防できる可能性があるという。

研究グループは、TFF1タンパク質を用いた治療法の開発を目指し、タンパク質を投与する方法として、薬の内服、注射、点滴などさまざまな方法から、どのような投与方法が効果的なのかを検討中だ。タンパク質の構造を改良することでさらに強力な肝細胞がん予防効果を発揮できる可能性もあり、精力的に研究を展開している。

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