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インフル患者からゾフルーザ耐性ウイルス分離、病原性や伝播性を解明-東大医科研ほか

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2019年11月27日 PM12:30

人工の耐性ウイルスではなく実際に分離したウイルスで基本性状を解析

東京大学医科学研究所は11月26日、インフルエンザ患者からバロキサビル・マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)に対して耐性を示すウイルスを分離し、その基礎性状を明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所ウイルス感染分野の河岡教授らの研究グループが、同大と国立感染症研究所、米国ウィスコンシン大学、米国マウントサイナイ医科大学との共同研究として行ったもの。研究成果は、英国科学雑誌「Nature Microbiology」のオンライン速報版で公開されている。


画像はリリースより

2018年3月に新規抗インフルエンザ薬、ゾフルーザの販売が日本において開始された。販売承認後初めて本格的に使用された2018/2019のインフルエンザ流行シーズンでは、単回経口投与で治療が完結するゾフルーザの利便性が支持され、その市場シェアは拡大した。その一方で、同シーズンに国立感染症研究所が実施した薬剤耐性株サーベイランスでは、ゾフルーザに対して耐性を示す変異ウイルスが高い割合で検出された。

これまでに行われた研究では、耐性変異を持つ組換えインフルエンザウイルスが人工的に作出され、その増殖能が解析された。その結果、この耐性ウイルスは野生型の感受性ウイルスよりも増殖能が大きく劣ることが示された。しかし、患者から分離された耐性変異を持つウイルスがどのような病原性を有しているのか、また感染部位で効率よく増殖することができるのか、さらに周囲に感染伝播する能力を保持しているのか、その基本性状は明らかになっていなかった。

感受性ウイルスと同等の病原性と増殖性を持ち効率よく空気伝播すると判明

今回研究グループは、2018/2019シーズンに国内の医療機関を受診したインフルエンザ患者から採取した臨床検体を入手。検体中のウイルス遺伝子を解析したところ、薬剤未投与のA/H1N1pdm09インフルエンザ患者では、ゾフルーザ耐性ウイルスは検出されなかった。一方、A/H3N2インフルエンザ患者では、2例の小児患者で耐性ウイルスが検出された。そのうち1例の家族は、その小児患者が発症するおよそ1週間前にA/H3N2インフルエンザを発症し、ゾフルーザを服用していたことが判明した。これは耐性ウイルスの感染伝播が同居家族内で起きた可能性が高いこと示しているという。さらに、ゾフルーザを服用した患者の検体についても解析し、12歳未満のA/H1N1pdm09あるいはA/H3N2インフルエンザ患者において、耐性ウイルスが高い頻度で出現することを明らかにした。

続いて、インフルエンザのモデル動物(ハムスター、マウス、フェレット)を用いて、患者から分離したA/H1N1pdm09あるいはA/H3N2耐性ウイルスの増殖性と病原性をそれぞれのゾフルーザ感受性ウイルスと比較。その結果、A/H1N1pdm09耐性ウイルスを感染させたハムスターとマウスでは体重減少が認められ、耐性ウイルス感染動物と感受性ウイルス感染動物との間で体重変化に違いは見られなかった。また、この耐性ウイルスは肺などの呼吸器で効率よく増殖することもわかった。A/H3N2耐性ウイルスを感染させたハムスターも同様の結果で、ゾフルーザ耐性ウイルスの増殖性と病原性は、感受性ウイルスと同等であることが明らかになった。さらにフェレットを用いて、ゾフルーザ耐性ウイルスの伝播力を調べる実験を行った結果、A/H1N1pdm09耐性ウイルスとA/H3N2耐性ウイルスは、いずれもフェレット間で効率よく空気伝播することが明らかになった。

小児では耐性ウイルス出現リスクを考慮した慎重な薬剤選択が望まれる

今回の研究から、患者から分離されたA/H1N1pdm09あるいはA/H3N2のゾフルーザ耐性ウイルスは哺乳類における病原性と増殖性が野性型の感受性ウイルスと同等であること、および、耐性ウイルスは哺乳類間を効率よく空気伝播することが明らかになった。これは、ゾフルーザ耐性ウイルスが人から人へ広がる可能性があることを示唆するものだという。

さらに同研究から、ゾフルーザ耐性ウイルスがゾフルーザを服用した小児患者において高い頻度で出現することが判明した。研究グループは、インフルエンザウイルス感染の経験がない(あるいは少ない)小児患者ではウイルス排除に必要な免疫が十分に誘導されず、耐性ウイルスが発生しやすい可能性があるとし、小児患者でのゾフルーザの使用については、耐性ウイルス出現のリスクを考慮した慎重な判断が望まれるとしている。また、研究グループは、「本研究を通して得られた成果は、医療現場における適切な抗インフルエンザ薬の選択に役立つだけでなく、耐性ウイルスのリスク評価など行政機関が今後のインフルエンザ対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となる」と、述べている。(QLifePro編集部)

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