ベロキシスは02年にデンマークのルンドベックからスピンオフして設立した会社で、米国ノースカロライナ州を拠点にしている。売上高は今年度に8200万ドルを見込み、黒字化を計画する。独自のドラッグデリバリー技術を用いた腎移植手術患者向けの免疫抑制剤「エンバーサスXR」を販売している。
旭化成は今年度からスタートした中期経営計画でヘルスケア事業を重点領域に位置づけており、25年度に売上高6000億円、営業利益800億円の目標を掲げている。医療機器と医薬品の両事業を成長させるためにM&Aを有効活用する戦略を打ち出しており、今回の買収もその一環。小堀氏は、「ヘルスケア事業のグローバル展開を加速するステップとしてベロキシスを買収した。素材や住宅に比べると事業規模が小さいヘルスケア事業だが、しっかりと成長させ、第3の柱にしたい」と話した。
今回の買収を通じて世界最大市場である米国での事業基盤を獲得する。医療機器事業では12年にゾール・メディカルを買収し、米国市場に本格参入を果たし、グループ売上高の15%、営業利益の19%を占めるまでに成長した。一方で医薬品では子会社の旭化成ファーマが国内を中心に「骨」「免疫」「神経」の3領域で展開してきた。
小堀氏は「日本のみに焦点を当てた医薬ビジネスを大きく成長させることは非常に厳しい状況」と述べた上で、「米国市場で医薬品の事業プラットフォームを獲得することが不可欠」とし、医療機器に続き医薬品でも海外成長を目指していく考えを強調した。
ベロキシスは、免疫・神経領域を得意とし、販売リソースをあまり必要としない高度医療施設や専門医を対象としているため、旭化成の米国戦略と合致した。獲得したエンバーサスはタクロリムスの徐放製剤で、28年まで特許期間を保持し、ピーク時には売上800億円を見込む。
また、米国で事業基盤を置くことで、ライセンスなどの事業開発活動で新たな成長ドライバーとなる医薬品の獲得機会増加につながるほか、自社創薬を行う上でも米国市場での医療ニーズを把握できるメリットもあるという。
30年までに医薬品事業を売上2000億円規模に引き上げる。小堀氏は「医薬事業と医療機器を持つことで、多様な成長力と競争力を獲得し、事業を拡大していきたい」と語った。