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甲状腺がんとともに摘出された副甲状腺、病理医不在でも同定できる新手法を開発-名大

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2019年11月26日 PM12:00

手術で偶発的に摘出された副甲状腺を迅速に自家移植するために

名古屋大学は11月21日、甲状腺がんの手術の際、偶発的に摘出された副甲状腺を同定する病理検査に代わる簡便で確実かつ安価な方法を開発したと発表した。この研究は、同大学医学部附属病院乳腺・内分泌外科の菊森豊根講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Surgery」に掲載されている。


画像はリリースより

甲状腺がんの罹患率は年々上昇傾向にあり、それに伴って、甲状腺切除の手術数も増加している。甲状腺手術の術後合併症の一つとして副甲状腺機能低下症があり、手足のしびれや筋肉のけいれん(テタニー)を来すことで、生活の質を落とす。永続的な低下症になった場合、生涯にわたりカルシウムやビタミンDの補充が必須となり、医療資源の消費の増大、経済的損失も招く。この副甲状腺機能低下症を起こさないためには、手術で摘出された組織から副甲状腺を同定し、自家移植することが非常に重要。しかし、病理医不足により副甲状腺を同定できず、自家移植がうまく行われないため術後合併症の頻度が高くなっている可能性がある。

そこで研究グループは、病理学的診断に代わり、手術中に実施可能な副甲状腺を同定する方法が必要と考えた。そのような方法が開発されれば、世界的に病理医が不足している状況において、手術後の副甲状腺機能低下症の発生率を低下できる可能性があるからだ。

一部をすりつぶして生食に溶かし、/LDH比を取る

副甲状腺は、甲状腺の背側に通常4個あるが、その大きさは米粒大で、色調も脂肪に非常に似ており、肉眼的に判別することは経験豊富な外科医でも困難な場合もあり、甲状腺を摘出すると、同時に副甲状腺が摘出されることがある。特に、がんの手術の際にはリンパ節を切除するために一緒に取れてしまうことが多々ある。摘出されてしまった組織から副甲状腺を同定する方法は、迅速病理診断が最も確実とされているが、病理医が常勤していない施設では、常時の診断が可能ではない。

一方、副甲状腺細胞にはミトコンドリアが非常に豊富であることが知られている。ミトコンドリアではAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)という酵素がエネルギー産生システムのなかで非常に重要な役割を果たしていて、豊富に存在している。一方、(乳酸脱水素酵素)はどの細胞にも普遍的に存在している酵素で、やはり細胞内におけるエネルギー産生に関わっている。これらの酵素は、検診でも必ず測定される項目で、どの病院でも安価に測定可能。研究グループは、こうした状況をふまえ、摘出された組織中のAST/ 比を計算することにより、副甲状腺を他の組織と区別できるのではないかと仮定した。

肉眼的におそらく副甲状腺と思われる組織を切除甲状腺およびリンパ組織から摘出し、その内のごく一部(1~2 ミリ角)を細かく刻み、生理食塩水に溶かした。この操作により組織に含まれているASTやLDHは生理食塩水中に遊離する。それを一般の血液と同様に検査に提出した。その結果、副甲状腺のAST/LDH比は明らかに他の組織より高く、0.27を閾値とすることにより、完全に判別することが示された。これにより、手術中に簡便かつ安価に摘出された副甲状腺を判別することが可能となった。今後は、実際の臨床に応用するために手術室等に設置できる POCT(臨床現場即時検査)機器でも再現可能であることを確認していく予定だとしている。

世界的に病理医は不足しており、特に発展途上国で顕著。研究グループは、「病理医の診断に匹敵する精度で副甲状腺を同定判別することができることは、病理医不在施設においても、摘出された組織の中から確実に副甲状腺を同定判別し、確実に自家移植できることにつながり、その結果、術後の合併症である副甲状腺機能低下症の発生頻度を低下させることが期待される」と、述べている。

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