1型ナルコレプシーモデルマウスはあるが、2型は存在せず
名古屋大学は11月19日、2型ナルコレプシーのモデルマウスの作製に世界で初めて成功したと発表しました。この研究は、同大学環境医学研究所神経系分野2の山中章弘教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Neuroscience」に掲載されている。
ナルコレプシーは睡眠障害の一種で、日中に過度の眠気を伴い、突然眠ってしまう病気。日本人は600人に1人がナルコレプシー患者だと言われている。主な症状は、突然眠ってしまう睡眠発作、突然体の力が入らなくなる脱力発作(カタプレキシー)、いわゆる金縛りである睡眠麻痺・入眠時幻覚だ。
ナルコレプシーには1型と2型があり、2型のナルコレプシー患者では、カタプレキシーの症状は見られない。病気が起こるメカニズムを理解するためには、同様の症状を示すモデルマウスの存在が重要だ。1型ナルコレプシーに関しては、オレキシン神経を脱落させたマウスがモデルマウスとなっていたが、これまでに2型ナルコレプシーのモデルマウスは存在しなかった。
オレキシン神経にアーキロドプシン3タンパク質が多く発現するよう遺伝子改変したマウス
今回、研究グループは、オレキシン神経の活動だけを制御するために、新しく遺伝子を改変したマウスを作製。近年、光遺伝学という手法が、神経科学研究に導入されている。黄色の光を当てると神経の活動を抑えることのできるアーキロドプシン3と呼ばれる光感受性タンパク質をオレキシン神経だけに発現するマウスを作製した。緑色の光を脳内に照射すると、実際にオレキシン神経の活動を抑えることができ、その結果、マウスを眠らせることに成功したという。
また、オレキシン神経にアーキロドプシン3タンパク質が多く発現するよう遺伝子を改変したマウスでは、光を照射しなくても、体内時計のリズム異常や、睡眠障害が現れることがわかった。同マウスでは、ナルコレプシー患者で見られるレム睡眠の増加が観察されたが、1型ナルコレプシーに特徴的な症状であるカタプレキシーの症状は見られず、オレキシン神経の脱落は見られなかった。これらの結果より、研究グループは、世界で初めて、2型ナルコレプシーモデルマウスの作製に成功したとしている。
今回の研究成果により、2型ナルコレプシーの症状が発現するメカニズムが明らかになり、より良い治療薬の開発に役立つ可能性があるとし、今後は、作製したモデルマウスを用いて、さまざまな薬物のスクリーニングなどを行い、ナルコレプシー2型の症状を改善する薬剤の開発に寄与したい、と研究グループは述べている。
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・名古屋大学 プレスリリース